その139 外交交渉で主導権を握って、人民に貫目を示す!

「九地の法」の続きです。

四、「交地」
味方も行けるし敵も来られるという、往来し易い土地が交地です。どちらからも侵攻が可能な土地ですから、どんどん攻めて行けば、うっかり深入りしてしまいます。そういう場所で注意しなければならないのが、部隊間の連絡を断たれてしまったり、連係がちぐはぐになってしまったりといった事態です。

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その138 散地では戦ってはならず、軽地には留まってはならない…

敵味方の関係は、どんどん移り変わります。戦いは静ではなく、常に動の中にあるのです。そして、戦い方は土地の性格に応じて練らなければなりません。
それを九つに分けて説明したのが「九地の法」です。

一、「散地」
九地の中で散地だけが、自国領内が戦場となります。諸侯がそれぞれ、自国の地で戦う場合のことです。散地には「軍の逃げ散る地」という意味があり、兵士が逃げてしまうから戦いを起こしてはならない土地ということになります。

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その137 敵と味方の位置関係から、動的に地の利を得る!

『孫子』第十一章は「九地篇」といいます。この篇では、敵と味方が置かれている戦場(土地)の状況を九つに分析しつつ、その対応策を論じています。

九地の内、衢地(くち)・囲地・死地の三つは九変篇にも出て来ました。また、地形篇でも土地の形状を六つに分類していました。それらと重なる内容があるものの、本篇では敵味方の位置関係がより重視されており、さらに動的な内容となっています。相手の動きを捉えながら地の利を得ていくよう教えているのが九地篇です。

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その136 可よりも不可を考えよ!そうすれば失敗を避けられる

孫子・地形篇その四の文全体を、さらに分かり易く訳してみます。

「自軍の兵士の実力で、攻撃が十分可能であると思われるときこそ焦ってはいけない。敵軍の実力を客観的に把握し、その準備が万端である場合、攻撃は不可能であるということを冷静に覚るべきだ。そうでなければ勝利は危うく、五分五分の戦いとなってしまう。

反対に、敵軍の準備が不十分で、今なら攻撃が可能というときも焦ってはいけない。落ち着いて自軍の兵士の実力を観察しなければならず、現状では攻撃が不可能であると認識されたなら、やはり開戦は避けるべきだ。そうでなければ勝利は危うく、五分五分の戦いとなってしまう。

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その135 勝利が万全となる原理原則

以下の事柄を知っていれば、勝利は万全であると孫子は教えました。
これらは、現代においても変わらぬ原理原則であると言えましょう。

・こちらに、十分な実力があること。
・相手が、まだ準備不十分であること。
・地の利を、しっかり生かすこと。
・天の時を、よく掴むこと。

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その134 誉める事と叱る事、前回上手くいった方法が次回も通用するとは限らない

それから、部下に注意するときの心得ですが、間違いに気付いて既に反省している場合と、事態をよく理解出来ないまま浮ついている場合とでは対応が異なります。

前者には、一通りの注意の後で、労いや励ましの言葉を添えると良いでしょう。落ち込んでいて、反省していることもハッキリしているのですから、むしろ慰めるべきです。

後者に対しては、間違いを覚らせるよう、きちんと叱らなければなりません。勿論ガミガミ言えば済むというものではありませんから、冷静に筋道を通して説明しながら、理でしっかり問題点を指摘する必要があります。

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その133 誉めながら注意し、注意しながら誉める

孫子・地形篇その四の、「兵士」を「部下」に置き換えてみれば次のようになるでしょう。

「部下を赤ちゃんのように大切にすれば、部下はその優しさに感激して、一緒になって困難を乗り越えてくれるだろう。部下を我が子のように慈しめば、部下は一緒になって会社の危機に立ち向かってくれるだろう。

だが、手厚くするばかりで一人前の社会人に育てられず、反発を恐れて指示や命令を出せず、組織が混乱してまとめることが出来ないようでは、まるで我が儘し放題に成長してしまった子供のようなもので全く役に立たない。」

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その132 優しさと厳しさ、その落差から指導者としての器量を養え!

思い遣りのある優しさと、怠けることを許さない厳しさ。前者が無いと部下たちは心から付いて来ないし、後者に欠けると部下たちは次第にだらけていきます。

両者のバランスを取ることは本当に大変です。優しさが単なる甘さとなり、厳しさが反感を買うだけパワハラと化し、一所懸命部下をまとめようとしているのに全然上手くいかないと。そのもどかしさに苦しみ、自己嫌悪に陥れば、逃げ出したい気持ちに追い込まれてしまいます。

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その131 進んでも勝利の名誉を求めず、退いても命令違反の罪を恐れない…

こうして現地の判断が尊重されるべきなのですが、その際、現場の総指揮官に自問自答して欲しいことがあります。それは、個人の感情を判断に挟さまず、無私の心で人民と君主のために尽くすという覚悟の有無です。

人は有能であればあるほど、私利私欲で身を滅ぼし易くなります。ここで勝てるぞ!と思えば、名誉を獲得するチャンスの到来に気が逸(はや)ります。気が逸れば、心の重心が上がって全体が観えなくなります。視野が狭まれば、あっけなく敵が仕掛けた罠(わな)に填(はま)り、大敗を喫することになりかねません。

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その130 現地現場の指揮官が最も状況を知っている!

孫子は、繰り返し「地の利」の重要性を訴えます。戦う前が大事であり、如何にしてこちらが有利な土地を確保するか、そして相手を不利な状況へ追い込むかです。まさに、戦う前に勝敗は決まっております。

「敵の情勢を調べて」おくこと、即ち敵軍の力量を正確に把握し、常にその動きを掴んでおくことは極めて大切です。それと共に、「土地が険しいか易しい(平坦)か、遠いか近いか」を計測することが、総大将にして筆頭将軍たる「上級将軍」の必須の任務となります。

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