その169 優秀なトップと有能な軍師、両者が揃ってこそ勝利を収められる!

では、『孫子』最終章の締め括りです。優秀なトップの下に、有能な軍師が仕えるということ。そこに、天下を取って素晴らしい政治を行う要があります。

《孫子・用間篇その五》
「昔、殷王朝が興ったとき、夏王朝にいた伊尹(いいん)の働きがあった。
周王朝が興ったときは、殷王朝にいた太公望呂尚(たいこうぼうりょしょう)の働きがあった。

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その168 敵を味方に変えられてこそ、戦わないで勝つ道が開かれる…

敵軍や敵城を攻撃し、敵将を倒そうとするときは、その前に間者が活動し、いろいろな者から情報を得ておく必要があります。守備に就いている将軍、君主の左右にいる側近、君主への取り次ぎ役(多くが宦官)は、重要な情報を知る立場の者たちですから、当然のこと探索のターゲットになります。

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その167 敵を味方に変えるにあたって重要なのは、利よりもむしろ大義名分

敵の間者が自国に潜入している場合、こちらの誰がターゲットとなるでしょうか。素人判断では、やはり有力者が標的にされるのであって、責任の軽い者や立場の低い者は相手にされないと思われがちです。ところが孫子は、有力者に繋がっているか、有力者の情報に関わる立場にいる者全てが、間者による調査対象になると教えています。誰でもターゲットになり得るのです。

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その166 松下幸之助は、松下電器全グループに“情報担当社員”を送り込んでいた!

間者が伝える情報ですが、常に詳細な内容(文字量)であるとは限りません。
合い言葉や隠語を使うなどして、途中で人に漏れても大丈夫なよう工夫している可能性があります。真実は行間を読まねば分からないのですから、受け取る側に「細やかな感覚」が無いと、「間者から真実を感得することが出来ない」ことになります。

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その165 役に立ったことを認めてくれ、誉めてくれるのは君主や将軍のみ

立派な座敷に座っている人物が、立ち上がって縁側に出る。そして、庭先に跪(ひざまづ)く間者から情報を受ける。時代劇を見ていると、そういう場面にしばしば出くわします。間者は身分が低くても、トップかそれに近い人物と直(じか)に会えるのだなと感心させられます。貴重な情報は何人もの人を介するのではなく、出来るだけ直接、君主や将軍に届けるのがいいわけで、そのことを孫子は「全軍の中で、間者より親近な者は無」いと述べました。

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その164 スパイ活動は、まるで大人のかくれんぼ?!

人間には多くのタイプがおり、表舞台に立って人前に出るのが似合う人、新しい事を起こす創業に向いている人、その理念・理論を構築し仕組みを考案するのに長けている人、舞台裏の裏方役に徹するのが好きな人、皆が迷っているときの決断が得意な人、誰かが決めてくれた後なら知恵を働かせられる人など、いろいろ存在します。

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その163 スパイや間者に五種類あり、死間は生きて帰れない

続いて、スパイや間者、間諜(かんちょう)には五種類あるという解説に入ります。

《孫子・用間篇その二》
「間者の用い方に五種類ある。郷間(きょうかん)、内間(ないかん)、反間(はんかん)、死間(しかん)、生間(せいかん)だ。これら五間を一緒に働かせながら、その動きを知られないのを「神の如き治まり」と謂(い)う。それは君主の宝とすべきことである。

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その162 情報収集にあたって最も重要となるのが、人による洞察力と判断力

戦争くらい出費の多い難事はありません。「十万の大軍を起こして千里の遠くに出征させ」るのですから、国民にとっても政府にとっても莫大な経費の掛かる取り組みになります。その上、戦争は非常事態なのですから「国の内外が騒動となり」、道路は兵士の移動と戦車や物資を運ぶ輜重車(しちょうしゃ)の通行が優先されます。人民の生活に制限が掛けられ、農民らは軍隊への奉仕に忙しくなり、耕作に励めない者が多数現れるでしょう。

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その161 開戦前に展開される、情報戦や宣伝戦に負けてはならない

筆者の世代の場合、スパイと聞けば「007」や「スパイ大作戦」、「0011ナポレオン・ソロ」などの映画やドラマを思い起こします。主人公のスパイは、強くて格好良く、冷静でジョークも言え、ハンサムで美女にモテモテです。

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その160 無意味で無駄な戦争は、決して起こしてはならない…

戦闘に勝った、敵城を奪ったと喜んでいるだけではダメです。勝利後の占領政策がきちんと行われませんと、抵抗運動が激しく起こるなどして統治の負担が多くなり、却って国家の「凶事」ともなります。敵の人民が占領軍の方針に従わず、ゲリラ戦などで激しく抵抗して来るですから、勝利までの軍費が無駄となり、その後の費用も嵩(かさ)みます。結局、掛けた軍費が無駄になり、その様子を孫子は「費留」と呼びました。

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