戦う前に考慮すべき五事と、情勢把握のための七つの視点について述べました。これら孫子の意見を、王がちゃんと聴くかどうか、聴いて生かすかどうかが問われます。
《孫子・計篇その三》
「私が述べた意見を、王がもし聴いたならば、兵を用いて必ず勝つことが出来る。それなら私は、この国に軍師として留まろう。
戦う前に考慮すべき五事と、情勢把握のための七つの視点について述べました。これら孫子の意見を、王がちゃんと聴くかどうか、聴いて生かすかどうかが問われます。
《孫子・計篇その三》
「私が述べた意見を、王がもし聴いたならば、兵を用いて必ず勝つことが出来る。それなら私は、この国に軍師として留まろう。
一に道、二に天、三に地、四に将、五に法。「五事」は勝つための基本です。これらを基に、孫子はどちらが優勢であるかを見極めてまいります。
《孫子・計篇その二》
「そこで戦う双方を比べ、情勢をきちんと計り、実情を求めよ。その見るべき項目は次の通りだ。
勝利を得るための基本である「五事」の最後は「法」です。「法とは何か。それは、軍隊の編成、職分、主軍の用務などについての、組織的規律のことだ」と孫子は説きました。
「軍隊の編成」の原文は「曲制」です。曲には、細かい事柄、すみずみまで詳しい、という意味があります。曲制は、軍隊における詳細な組織編成のことです。
「五事」の続きで、今度は「地」です。「地とは何か。それは、距離が遠いか近いか、地勢が険しいか易しいか、地域が広いか狭いか、地形が高いか低いかなど、地理的条件のことだ」とあります。
これらは、戦いの場所を知っておくことの重要性を示しています。戦場までの距離は遠いのか近いのか、そこは険しい地なのか平らな地なのか、範囲として広いのか狭いのか、地形として高地なのか低地なのか、といった地理的条件を掴んでおけと。
では、少しずつ解説してまいります。まず「道とは何か。それは、国民と君主が同じ意志を持つかどうかという、政治的条件のことだ」という文についてです。
ここで言う「道」は、儒教的な「人の道」とは違います。「国民と君主が同じ意志を持つ」ための道であって、上下が一体となれる理念や方針、組織が一丸となって進んでいける目標のことです。それは、戦争以前に求められる国家統一力の軸と言えます。
『孫子』十三篇の最初は「始計篇」です。「計」は、「言」と多数を表す「十」の合字(会意文字)で、口で言いながら、まとまった数を計りかぞえることです。計略や計画という熟語がありますように、情勢をきちんと計り、それを表明することによって物事は実現するのです。
「始計」は、始めに計るべき基本、即ち開戦の前によく考察しておくべき課題という意味の篇名です。始計篇には、勝つための基本となる五つの要素や、勝算の見極めの重要性など、総論的な内容が記されています。
かつてチャイナに、春秋時代と呼ばれる時代がありました。周王室の権威は次第に衰え、諸侯は互いに対立し、覇者が次々入れ替わります。下の身分の者が上の者を凌(しの)ぐという、下剋上が盛んな乱世に入っていたのです。諸国は、いかにして自国を守るかに知恵を絞らねばならず、いわゆる兵法の専門家が登場する時代になりました。
◇食うか食われるかの陣取り合戦に負けてはならない!◇
戦前から続いていた浜松の老舗百貨店が、平成13年(西暦2001年)多額の負債を抱えて経営破綻。全従業員が解雇され、百貨店発行の商品券は紙屑と化しました。地権者が入り組んでいる跡地は未だに更地状態で、浜松の中心市街地衰退の象徴となっています。