すべてをあるがままに受け入れるという在り方は、努力を否定して「今のままでいい」というのではないし、次々生ずる問題に対して何も対策をしなくていいというのでもありません。あるがままの容認には、真の強さがあります。
連載
其の四十一 一切がこの宇宙の調和維持のために生まれて来ている…
松下幸之助塾長が善悪論で言われたかった骨子は、善と悪は表裏一体の関係にあって切り離せないということではないでしょうか。善がなければ悪は存在せず、悪が無ければ善は成り立たない。だから両者は一つであると。善悪は対立する二元ではなく、見方や状況によって、善とも悪ともなる一元的なものであるというわけです。
其の四十 善人よし、悪人もまたよし…
ところで、松下幸之助塾長(当時)が塾生に語った講話の中に、なかなか難解な内容がありました。その一つが「悪も必要」という考え方です。松下塾長は、下記のような問い掛けを塾生にしています。
其の三十九 日本は一根源多神教の国
宇宙以前に創造主がおり、創造主はその力を使って宇宙を創造されたという考え方があります。創造主は宇宙以前、言い換えれば宇宙の「外」にいるという見方であり、一般的に一神教がこの解釈をとります。唯一神である創造主が、この世の一切を外から創られたという見解です。
其の三十八 宇宙を生成発展させる力は、はじめから宇宙の中に内在している!
この宇宙は、どのように生成し発展してきたのでしょうか。宇宙活動の根源があるとすれば、それは一体何でしょうか。
『古事記』冒頭には、アマノミナカヌシの神という宇宙の中心を司る働きがあり、それが陽の働きと陰の働きとなって活動力(ムスヒ)を生み、見事に発展していって大宇宙が成立したと記されています。
其の三十七 必要な物は取り入れ、不要な物は捨てていく…
何かを恐れる心を、自分が作り出している場合があると述べました。不安が高まってきて恐怖心が生じ、疑心暗鬼となって対立が深まるのは、国家同士の関係にも起こり得ます。
これまで外向的な約束を互いに何度も裏切ってきたというような場合、相手国に対する不信感は根深く、ちょっとした事で緊張の度が高まり易くなります。ここで叩いておかないと一気にやられかねないという恐怖心が、先制攻撃を誘発させる下地となるのです。
其の三十六 暴言や暴力は、心に余裕の無い人ほど起こし易い…
続いて沖導師の教えを紹介していきます。
「恐怖するのは、悪あり、損あり、敵ありと対立するからで、物事の真実を見る明がないからである。物事の真実は、現象はそのまま実在の現われであるという事実である。」(1960沖正弘『ヨガ行法と哲学』霞ヶ関書房60頁)
其の三十五 心を静めるのも乱すのも、その元は自分の中に存在している
物事をバランス良く全体的に観る方法として、「四観」について述べてきました。
物事を素直に観る力。それは余分な力が抜けていて、心身が平静なときにより発揮されます。心身が不安定になると、それに応じて目の前にあるものが歪んで見えるようになり、そのままでは物事の真実を観ることが出来ません。
其の三十四 一回も嘘をつかず、何の過ちも犯すことなく人生を終える人なんていない
物事の真実を把握するには、バランス良く全体を観る必要があります。そのための観方として、主観・客観・表観・裏観による「四観」があります。四観には組み合わせがあり、裏観+主観タイプに属すのが宗教家であるとし、宗教は「許し」によって人々を救済するということを説明しました。
其の三十三 道徳は裁き、宗教は許す。ここにもバランスが必要
縦横十字のマトリクス表を、もう一度頭に浮かべてください。左上(2)の表観+客観タイプに「道徳家」が、右下(4)の裏観+主観タイプに「宗教家」がきます。道徳と宗教は、どちらも「人の生き方」を教えていますから似ていると思われがちですが、左上と右下という対極に位置する分、明らかな違いがあります。