その120 部下への注意が、反発を生むことなく行き届くための心得

次に、部下に間違いを指摘したり、罰を与えたりするときの注意事項です。それが上手く行くときの条件を一言で言えば、「上司の人間そのものが信頼されていること」に尽きます。人間自体が信じられているなら注意がしっかりと行き届くでしょうが、不信に思われ、軽蔑されているような場合は、「あんたにだけは言われたくない」と反発を受けることにもなりかねません。

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その119 人数は多ければいいというものではなく、集中が大事

行軍篇その6では、下記のような心得が述べられています。
・兵士は多ければいいというものではなく、集中が大事。
・兵士がなついていないと、罰を与えるほど動いてくれなくなる。
・法令が信じられないと、人民は付いて来ない。

《孫子・行軍篇その六》
「兵は多いほど益々貴ばれるというものではない。ただ武力で猛進してはいけない。戦力を集中し、敵情を料(はか)れば、相手を奪取するのに十分だ。ところが思慮無く、敵を侮れば、相手の擒(とりこ)となってしまう。

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その118 友好的な姿勢の陰で、実は時間稼ぎをしている敵に要注意!

荷を運び、戦車を牽く。そのために必要な家畜が馬です。これを殺すとは、一体いかなる状況でしょうか。第一は食糧不足です。「馬を殺して肉を食べてしまうのは、軍の食糧が無くなったから」だと。さすがに軍馬まで殺してしまったら戦闘にならないので、殺す馬は運送用の馬だろうと思われます。

そして「炊事道具を打ち壊してしまって幕舎に帰ろうとしない」という事態になると、決戦を前にして最後の食事を終えたことを意味します。追い詰められて「賊化し」、死に物狂いで向かって来る敵であるということを意識しておかねばなりません。

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その117 組織安定の根本は、トップの腹の据わり具合にある!

孫子の観察力は、実に細やかです。「敵兵が杖を突いて立っている」のを見て、これは「食糧不足で飢えている」のだろうと察します。現代であれば、人が壁や手すりに寄り掛かりながら立っている姿に置き換えられます。それが訪問先の社員の姿なら、休憩も無く働かされているということかも知れません。

あるいは、我が社の営業マンが外回り中にそういう態度を取っていれば、過労状態の会社なのだろうと思われてしまう可能性があります。

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その116 先を読める人、直感力の強い人ほど、観察ポイントを多く持っている!

相手の状況や心理状態を察知するためには、囚われの無い心で直観を働かせる必要があります。そして、受け止めた感覚の裏付けが必要となりますが、それがこうして述べてきた孫子が示す「事実を見抜くためのポイント」です。

行軍篇その五に出て来る「有利なことが分かっていながら進もうとしないのは、疲れ切っているからだ。旗や幟(のぼり)がやたらに動くのは、軍の内部が乱れているからだ」といった事柄も、まさにそのポイントです。

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その115 出たり退いたりを繰り返しているときは、こちらを誘い出そうとしている

相手の気持ちが、なかなか掴めないときがあります。そういうときは、表面的な態度や雰囲気とは逆のところに、敵の真意や狙いがあるのかも知れません。

たとえば、敵側の使者がやって来て、言葉は柔弱で平和的。しかし、守備を固めつつ着々と戦闘の準備を整えているというようなときは、間もなく攻撃して来る可能性があります。「口上は謙(へりくだ)っているのに守備を増強しているときは、本当は進撃するつもりだ」というのがそれです。

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その114 敵はああ言っているが、本当の狙いはこっちにあるという読み

日本人は一般的に人間性が素直で、人の言葉をそのまま信じます。それはマコトの精神の表れとして、とても素晴らしいことですが、時と場合によっては問題となります。

外交がその一つで、相手国が平和友好的な言葉で接してくれば、ホッと一安心して警戒心を失い、高圧的な言葉で迫ってくれば、単に反発するか、慌てふためいてひたすら低姿勢を取ります。何度も謝罪させられることがしばしばあり、軟弱外交と批判されます。

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その113 草木や鳥獣の動き、土煙の上がり方から敵の様子を察知せよ!

予兆や前兆に敏感になるためには、それを見逃さないためのセンサーが必要となります。センサーとは即ち、状況の変化に対して「これは変だな、おかしいぞ。何か意図があるはずだ」などと受け取る感覚のことです。

「敵が近くにいながら静まりかえっているのは、地形の険しさを頼みにしているからだ」。この意味は、両軍が接近しているにも関わらず敵がひっそりと静まりかえっているのは、地形が険阻であることを頼みにしているに違いないということです。地の利を得て待ち構えていると思われる相手に対して、不用意に攻めてはなりません。

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その112 予兆や前兆という「先だって発生する現象」を見逃すな!

孫子の兵法とは、まさに「戦う前に予(あらかじ)め勝っておく」ための心得に他なりません。そのために必要となるのが、小さな現象から次に起きようとしている事を、いち早く読み取る観察力や注意力です。

多くの出来事に、予兆や前兆と呼ばれる「先だって発生する現象」が見られます。それを見逃すことなく観察し、今から何が起ころうとしているのか、相手の意図や狙いはどこにあるのかを察知することが求められます。

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その111 自然の地形の中に危険な箇所がいろいろと存在している

行軍篇その三に入ります。この項目では、自然の地形の中に危険な箇所がいろいろと存在していることを述べ、自軍はそこから遠ざかり、敵はそこに追い込まれるよう仕向けよと教えています。

現代においても、土地や場所、建物や環境などを、しっかりチェックしなければならないことは言うまでもありません。この項目は、このまま読めば分かるでしょうから解説は省きます。身を置く際の注意点として置き換えてみてください。

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