昭和天皇のご進講役であった三上照夫氏は、国家という生命体を発展させるためには、「第一に中心人格を持つこと、第二に共通の基盤として上下本末を自覚したる社会を形成すること、第三に建国の理想を持ち、中心人格がそれを時に応じて、自らの名に於いて表明すること」(2018宮崎貞行『天皇の国師 賢者三上照夫と日本の使命』きれい・ねっとp.309.)が要件になると述べました。
それは家庭や企業も同じです。第一の「中心人格」は、国家においては元首、企業においては社長、家庭においては一家の主(あるじ)にあたります。この中心人格の重要性として、よく言われる経営者への教訓に、「社長の器以上に会社は大きくならない」という言葉があります。
「器」は「器量」とも言います。元首、社長、主が有すべき大切な器とは、一体どういうものでしょうか。
我が国の元首は天皇です。天皇陛下は、権力闘争を超えたお立場から、国家の発展、国民の幸福、そして世界の平和を毎日祈っておられます。意識の次元が誠に高く、そこに天皇の“器”の大きさがあると言えましょう。世に言う器などというものを超越した、最高度の霊格の高さをお持ちでいらっしゃるという次第です。
家庭の中心人格ですが、「一家の主」という言葉は、最近全く耳目に触れなくなりました。横並びの平等化教育によって、家庭に主がいなくなった、あるいは主の居場所が無くなったのだろうと想像します。
いずれにせよ、会社、活動、家庭など、組織や集団には、「まとめ役」である長(をさ)や主が必要です。問題は、長や主が、自分自身の器をどう大きくしていくかです。
それには、小我を捨てて無我となり、大欲や大我となるよう心を磨いていくことが肝腎です。自分が起こした会社や団体であっても、それをいつまでも「自分のもの」として囲い込むのではなく、「公器」と心得ていくことが出来るかどうかです。
また、活動や経営の骨格となる業務を、自分一人で何から何まで抱え込んでいるようでは、まさに自分の器が活動の限界となってしまいます。人に任せるということは口で言うほど簡単なことではありませんが、ある程度組織が大きくなってきたら、思い切って側近やナンバー2、補佐役などの側近を持つようにし、彼ら・彼女らに委ねたり任せたりすることによって、己自身を成長させることをお勧めします。要するに、分身を増やすことによって器を養うのです。
そうして、国家、会社、家庭などを生命体と見なし、イノチを育むよう取り組むところに日本的経営の基本があるのだと思われます。
続いて、国家の中心人格について三上氏の見解を元に、さらに考察を深めてまいりましょう。(続く)