其の四十二 思想における敗戦が、物理的な敗戦上に、日本の復活を阻(はば)んでいる

大和言葉・国学の師である河戸博詞先生の、憂国の情が舌鋒鋭く炸裂します!
今(令和8年)から50年ほど前の国情について、戦後復興を果たして物質的には栄えてきたものの、国民が日本人としての気概や誇りを失い、個人中心主義に堕し、いよいよ世界の食い物にされようとしていると。

「昨今の状況を見ていると、日本はすっかり、肥えた豚になってしまったね。
頭は馬鹿、体はまさに食べごろのこの国だ。与野党も独占企業も労働組合も、皆が寄ってたかって国を食い物にしようとしている。外交官も、国の大義を主張しようとせず、予算にたかって贅沢三昧を極めている。ソ連や中国、韓国など外国も日本弱しとみて食いついてきている。物質主義、自由主義、無責任主義の弊害がまさに噴出してきたね」と河戸が言った。」(2018宮崎貞行『天皇の国師賢者三上照夫と日本の使命』きれい・ねっとpp.242-243.)

戦後、焼け跡からの復興のため、生き残った軍人武士らが粉骨砕身頑張りました。仲間は戦地で亡くなったが、なぜか自分は帰ってきた。「一度死んだ命だから何も恐くはない」という捨て身の思いで、日本の再生に邁進されたのです。

しかし、経済活動ばかりに集中し、日本人としての精神教育を疎かにしたこともあって、民族の氣概や国家の誇りというものを失ってしまったのです。

あまりの悔しさから、「情けないね、こんな国をつくるために我々軍人は大東亜解放戦争を戦ったはずではなかったのにな。二百六十万人の戦死者は、あの世で嘆いているよ」(同p.243.)と述べた後、「河戸少佐は、天を仰いで嘆息をついた。」(同p.243.)とのことです。

「それにしても、東條手掌は遠慮しすぎたね」(同p.243.)と、河戸先生は語りを続けます。

「中国人民を弾圧する軍隊さえ人民解放軍と呼んでいるのだから、堂々と大東亜解放戦争と命名すべきであったね。我々は、マレーシア、ベトナム、インドネシア、ビルマ、フィリピンなど欧米の植民地を解放した。中国の汪兆銘政権とも協定を結び、白人支配を打倒しようとした。我が国の捨て身の戦争のおかげで、アジア諸国は植民地支配から解放されたのに、肝心のわが国がアメリカの思想的植民地になってしまったとはなあ」と河戸がふたたび慨嘆した。」(同p.243.)

我が国に西欧思想が怒濤のように入ってきてから、もうじき160年になろうとしています。また、敗戦によってアメリカ支配下に置かれてから、81年目(令和8年)となりました。

日本人の精神構造が、明治に入って西欧化し、戦後になってアメリカナイズされたということは、要するに思想戦に負けたということを意味しています。思想における敗戦が、物理的な敗戦上に、日本の復活を阻(はば)んでいるのです。
(続く)