神武天皇が日向の国を治めたときの基本理念が、「蒙(くら)くして正しきを養ひ、(中略)慶(よろこび)を積み暉(ひかり)を重ね、多(さわ)に年所(とし)を歴(へ)たり」でした。(『日本書紀』巻第三 神武天皇・即位前紀)。
天孫降臨の際、まだ地上は暗い状態でしたが、ニニギノミコトとその子孫が正しい道を養い、慶事を重ねられ、長い年月を経て今に至りました、というのがこのお言葉の意味です。そうして、神武天皇はご東征あそばされ、大和の橿原の地に都を定め、日本国の統治を進めていかれました。
さて、国家経営と、会社経営、さらに個人の人生経営には共通する心得があります。それは、いずれも「生命体の経営」であるという点です。国家も会社も個人も、それぞれ生命体であるということを前提に経営をすると上手くいくのです。
昭和天皇のご進講役であった三上照夫氏は、神武天皇のご精神は経営理念に当てはまるとし、「『慶を積み、暉を重ね、正しきを養わんがために』経営をする」(2018宮崎貞行『天皇の国師 賢者三上照夫と日本の使命』きれい・ねっとp.261.)よう説きました。
その三上氏の指導内容について、その要点を(筆者の独断によって)箇条書きで記しておきます。
・社員を、ただ食わすだけなら労力と賃金の交換に過ぎない。大事なのは、生きる意義、目的を明らかにすることにあり、それがあれば社員の顔は輝いてくる。(同p.261.)
・株主と経営者と従業員が利益の配分を巡って対立するのではなく、一体となって協力し、会社の永続的な発展を求め、一人一人の長期的な人生設計が出来るよう互いに配慮する。(同p.263.)
・我が国の会社は、個々人の短期的な利益よりも、共同体の長期的な発展を重視する。(同p.263.)
・社員の幸せは、誇りと情熱を持てる仕事をすることにある。一生かけて惜しくない、生きがいのある仕事を持とう!(同p.263.)
経営理念とは、会社経営における考え方や在り方をまとめたものです。何のため・誰のために会社や仕事があるのかといった、「考え方の基本」を成文化したものが経営理念なのです。この「経営理念の樹立」が、三上氏が教える「経営の五原則」の一番目でした。(続く)