其の四十四 憲法十七条に示された、日本人の心の在り方や、問題解決の心得…

憲法十七条は文章にまとめてあるのですから、その意味で成文憲法です。
しかし、そこには普段文章化されていない、日本人の「心の在り方」や「問題解決の心得」といった、日本社会の深層に息づいている「和の精神」が込められています。

私見が入りますが、各条文の要点と、その主旨を一言ずつ述べておきます。

第一条「和を以て貴(とうと)しと為す」対立・分断ではなく和合共生を。
第二条「人、はなはだ悪しきはすくなし」どうしようもない悪人は少ない。
第三条「詔を承けては必ず謹め」天皇陛下のお言葉は素直に受け止めるように。
第四条「禮(礼)を以て本とせよ」互いに敬い合い、挨拶や返事をしっかりと。
第五条「明らかに訴訟(うったえ)をさだめよ」接待・賄賂受けず裁判公正に。
第六条「悪を懲らし善を勧めよ」組織の最悪は中間者による上下の離間誘導。
第七条「人にはおのおの任あり」天分を生かして人を得れば国家は必ず治まる。
第八条「早くまいりおそく退(さが)れ」遅刻しない、勝手に早退もしない。
第九条「事毎に信(しん)あれ」ウソを言わず、マコトを大切に。
第十条「共に是れ凡夫のみ」誰もが不完全なのだから、意に反しても怒らない。
第十一条「賞罰を明らかにすべし」成果にはご褒美、間違いには注意と修正を。
第十二条「百姓(ひゃくせい)より斂(おさ)めとることなかれ」重税は禁止!
第十三条「同じく職掌を知れ」自分だけでなく他人の仕事の意味も知るように。
第十四条「嫉妬あることなかれ」嫉妬は対立を招いて有能な人物を潰していく。
第十五条「私(わたくし)に背きて公(おおやけ)に向かえ」仕事は公のため。
第十六条「春より秋…民を使うべからず」農繁期の国民を労働作業に使わない。
第十七条「事は独り断ずべからず」独裁独断せず、意見を聞いて衆知を集めよ。

いかがでしょうか。国家統治の制度法律と言うよりは、政治家の在り方や役人の就業心得が細やかな心で書かれております。

いくら立派な制度や見事な仕組みを作ったところで、それだけでは社会や組織は治まりません。それらを用いる「人間の心」が付いて来なければ、せっかくの制度法律は悪用され、それを大義名分に使うことで私利私欲を満たようなす者ばかりが上に立ってきます。そうならないよう、国民の戒めとして存在しているのが不文憲法であるというわけです。

聖徳太子不在説というものが昔からありますが、太子以外の誰がこれらの条文をまとまられたでしょうか。太子は、人で随分苦労した人物であったと思われます。苦労した分、人間通となって仏教の慈悲、利他大乗の心を受け止め、また儒教の仁義徳治の精神を学び取ることになり、それらをもとに乱れた世の中における統治の心得を説かれたのだと思われます。(続く)