沢山の人があっけなく死に、
だからこそ孫子は、戦わないで勝つ方法を唱えました。
しかし、どうしても戦わなくてはならないときは、
沢山の人があっけなく死に、
だからこそ孫子は、戦わないで勝つ方法を唱えました。
しかし、どうしても戦わなくてはならないときは、
戦争は常に死と隣り合わせだから、兵隊は誰もが開戦を恐がります。将軍は、そういう兵士らに腹を括らせねばなりません。もう戦う以外に無いと覚悟を据えさせたときに、兵士たちは豪傑ともなって奮戦するようになるのです。
《孫子・九地篇その三》
「敵国に進入するときの方法だが、深く攻め入るほど味方は戦いに専念し、敵は抵抗出来なくなる。(食糧は)敵の沃野(よくや)から調達すれば全軍の食は足りる。休養に努めて(兵士を)疲労させず、氣を合わせて力を積ませよ。軍を動かす際は謀計をめぐらし、相手に測られないようにせよ。
それから「ある者が質問」しました。「敵が整った大軍で、まさに攻めて来ようとしているときは、どのように対応すればいいのか」。これへの孫子の答は「まず敵の要(かなめ)を奪え。そうすれば、こちらに従うだろう」ということでした。
事前に相手に対する離間策を仕掛ける間も無いまま、逆に整った大軍となって攻めて来るときは、一体どうすればいいのかという問いです。孫子は明快に、「敵の要を奪う」ことに集中せよと回答しました。「敵の要」の原文は「その愛する所(其所愛)」で、要とは相手の最重要箇所のことです。
軍隊の「結束力が弱まりそうなポイント」として、前軍と後軍、大部隊と小部隊、身分の高い者と低い者、上官と部下という4つの関係が示されました。これらは、いずれも互いに反発し合う関係にあります。
前軍と後軍は、企業なら本社と地方に置き換えられます。本社がお高くとまれば、地方の支店や工場は、本社に対して卑屈になります。そこが亀裂の元になるのです。
組織というものは、放っておいたら必ず壊れるほうへ向かいます。元々、個々バラバラな人間が集まって集団を作っているのですから、努力しなければ崩れていくのは組織の性(さが)として当然のことです。
それは、軍隊という結束力の高い組織も同様です。孫子は組織の弱点、即ち「結束力が弱まりそうな点」を捉えながら敵軍を分離させ、勝運をこちらに導こうとしました。そこを衝けば、相手が一枚岩となってこちらに向かって来ることを避けられるという関係があるものです。
七、「圮地(ひち)」
山林や険阻な要害、沼沢など、行軍が困難な地が圮地です。「圮」には破れる、崩れるという意味があります。軍を進め難い地ですから、圮地は速やかに通過せねばなりません。
圮地を現代に置き換えますと、身動きが取り難く、軽はずみに関わると足元を掬われかねない場や状況に相当します。政治活動ならば、根深い対立を抱えていて、新人には手に負えない地域などがそれに近いでしょう。正義感から不用意に関わると、その問題への取り組みで、人生の大半を費やすことになるかも知れません。その問第解決こそ我が天命なりと、真底確信しているならその限りではありませんが。
「九地の法」の続きです。
四、「交地」
味方も行けるし敵も来られるという、往来し易い土地が交地です。どちらからも侵攻が可能な土地ですから、どんどん攻めて行けば、うっかり深入りしてしまいます。そういう場所で注意しなければならないのが、部隊間の連絡を断たれてしまったり、連係がちぐはぐになってしまったりといった事態です。
敵味方の関係は、どんどん移り変わります。戦いは静ではなく、常に動の中にあるのです。そして、戦い方は土地の性格に応じて練らなければなりません。
それを九つに分けて説明したのが「九地の法」です。
一、「散地」
九地の中で散地だけが、自国領内が戦場となります。諸侯がそれぞれ、自国の地で戦う場合のことです。散地には「軍の逃げ散る地」という意味があり、兵士が逃げてしまうから戦いを起こしてはならない土地ということになります。
『孫子』第十一章は「九地篇」といいます。この篇では、敵と味方が置かれている戦場(土地)の状況を九つに分析しつつ、その対応策を論じています。
九地の内、衢地(くち)・囲地・死地の三つは九変篇にも出て来ました。また、地形篇でも土地の形状を六つに分類していました。それらと重なる内容があるものの、本篇では敵味方の位置関係がより重視されており、さらに動的な内容となっています。相手の動きを捉えながら地の利を得ていくよう教えているのが九地篇です。
孫子・地形篇その四の文全体を、さらに分かり易く訳してみます。
「自軍の兵士の実力で、攻撃が十分可能であると思われるときこそ焦ってはいけない。敵軍の実力を客観的に把握し、その準備が万端である場合、攻撃は不可能であるということを冷静に覚るべきだ。そうでなければ勝利は危うく、五分五分の戦いとなってしまう。
反対に、敵軍の準備が不十分で、今なら攻撃が可能というときも焦ってはいけない。落ち着いて自軍の兵士の実力を観察しなければならず、現状では攻撃が不可能であると認識されたなら、やはり開戦は避けるべきだ。そうでなければ勝利は危うく、五分五分の戦いとなってしまう。