その151 深く入れば戦いに専心出来るが、浅いままだと逃げ散ってしまう

戦い方は土地の性格に応じて練るべきであり、それを九つに分けて説明しているのが九地篇です。この九地に対して、孫子は補足を述べています。

《孫子・九地篇その六》
「敵国に攻め入ったときの道理として、深く入れば戦いに専(もっぱ)らとなるが、浅ければ逃げ散ることになる。

本国を去り、国境を越えて軍隊を進めた所を絶地という。
その中で、道が四方に到達している所を衢地(くち)、深く入った所を重地(ちょうち)、浅く入っただけの所を軽地、背後が険しく前方が狭い所を囲地、行き場の無い所を死地という。

こういうことから私は、
散地では士卒の心を一つにし、
軽地では士卒らを連ねさせ、
争地では後方の軍隊を走らせ、
交地では守りを慎み、
衢地では同盟関係を固め、
重地では食糧を絶やさず、
圮地(ひち)では悪路を通り過ぎ、
囲地では逃げ道を塞ぎ、
死地では生きのびられないことを示す。

そこで、兵士の心情として、囲まれたら禦(ふせ)ごうとし、他に方法が無ければ戦い、切羽詰まれば従うことになる。」

※原文のキーワード
敵国に攻め入ったときの道理…「客之道」、深く入れば戦いに専らとなる…「深則専」、浅ければ逃げ散る…「浅則散」、軍隊…「師」、背後が険しく前方が狭い…「背固前隘」、行き場の無い所…「無所往」、士卒の心を一つにする…「一其志」、連ねさせる…「属」、後方の軍隊を走らせる…「趨其後」、慎む…「謹」、同盟関係を固める…「固其結」、絶やさず…「継」、悪路を通り過ぎる…「進其塗」、逃げ道を塞ぐ…「塞其闕」、生きのびられない…「不活」、他に方法が無ければ戦う…「不得已則闘」、切羽詰まれば従う…「過則従」

孫子は人間心理を巧みに捉えつつ、最も有効となる戦い方を練っております。
「敵国に攻め入ったときの道理として」、兵士らが戦闘に一意専心となれるのは深く進んだときであり、「浅ければ逃げ散ることになる」と説きます。

そこで「本国を去り、国境を越えて軍隊を進めた所を絶地と」呼び、それを衢地(くち)、重地(ちょうち)、軽地、囲地、死地に分けて説明した後、もう一度九地それぞれに心得を述べました。(続く)