軍隊の「結束力が弱まりそうなポイント」として、前軍と後軍、大部隊と小部隊、身分の高い者と低い者、上官と部下という4つの関係が示されました。これらは、いずれも互いに反発し合う関係にあります。
前軍と後軍は、企業なら本社と地方に置き換えられます。本社がお高くとまれば、地方の支店や工場は、本社に対して卑屈になります。そこが亀裂の元になるのです。
大部隊と小部隊も同じです。これを自治体に置き換えれば、大きな都市が小さな都市に対して横柄な態度を取れば、当然のことながら小都市は抵抗します。それによって、互いに相手を嫌うようになります。
身分の高い者と低い者もそうです。前者は後者の素朴さを蔑(さげす)み、後者は前者のひ弱さを批判します。平等社会の今日でも、なかなかフラットにはならないもので、山の手と下町とでは、言葉遣いから趣味に至るまで未だに違う傾向があります(なお、筆者は完全下町+田舎育ちです)。
上官と部下についても、命令する側と命令される側に分かれ、特に下から上に対して反発することになります。真面目で責任感は強いものの、器量が小さく人格が練れていない上司ほど、規則しか頼れるものが無く、地位を笠に着て上からものを言います。部下たちは、そういう上役を全然尊敬出来ません。ガミガミ言われるほど軽蔑しますから、人間関係に歪みが生ずる一方となります。
こういう人間関係の基本的問題は、いくら通信手段が発達した現代でも変わらず存在しています。その対策は、逆をやれば良いと思います。前軍と後軍は互いに連絡を取り合、大部隊と小部隊は互いに頼り合い、身分の高い者と低い者は互いに救い合い、上官と部下は互いに助け合うよう、普段から努力するのです。
国家においても、国民の一体感が問われます。国と地方、国民と政治(政治家)、生活と伝統文化などがバラバラとなれば、そこに弱体化を狙う敵につけ込まれる隙が生じます。
もしも我が国を侵略しようという他国があれば、日本人を離散させ、集合出来ないよう仕掛け、「たとえ集合しても整わないよう仕向け」て来るはずです。「その上で、利に合えば動き、利に合わなければ動かな」いのですから、こちらとしては徹底して防御の整備に努め、相手にとってのリスクを高めておかなければなりません。誰でも取り組めるその第一が、国民の一体感の醸成なのです。
(続く)