何であれ、已むに已まれぬ思いから新しい分野を開拓したり創造したりする人は、どこかで“既存の価値”を捨てています。安泰に生きられる立場、出世が約束される世界などを捨て、納得のいく境地を求めたのです。そして、世間の冷視と孤独に耐えつつ、苦労辛酸を嘗めながら自分の流儀というものを創っていきました。
そういう生き方は、特別な人たちだけが選ぶ道なのかというと決してそうではありません。創造者ばかりでなく庶民の人生においても、何かを捨てねばならない場面がやって来ることがあります。そのとき、誰だって迷いと悩みに襲われます。そういう我々のために、兼好法師は第一義(一番大切な事)を重視することの大切さを説きました。