其の十一 疑っていても大丈夫、唱える言葉の力によって必ず上手くいく!

どんな稽古や修行にも、途中で飽きたり、負担ばかり感じて辛くなったり、続けていて意味があるのだろうかと疑いの心が生じたりします。法然上人の信者の中にも、そういう人たちが現れました。

ある弟子が、率直に質問します。「念仏のとき、眠気におそわれて修行を怠ってしまうことがあるのですが、どうしたらこの妨げを除けますでしょうか」。すると法然上人は、「目が覚めたときに念仏しなさい」とあっさりお答えになりました。

続きを読む

其の十 稽古や修行に飽きてくる、辛くなる、疑いが生ずる…

親しい仲だからこそ礼儀を尊ぶということの大切さは、今日の武道稽古にも見られます。道場に入退室する際に礼をし、稽古の最初と最後に列を整えて正坐し、神棚、師範、お互いの順で礼をします。いつも顔を合わせている仲間同士だからこそ、きちんと礼を交わすのです。そうすることによって、心を静めて集中させ、怪我の無い真剣な稽古が出来るわけです。

さて、どんな稽古や修行にも、途中で飽きたり、負担ばかり感じて辛くなったり、はたまた「こんな事を続けていて本当に意味があるのだろうか」と疑いの心が生じたりするものです。

続きを読む

其の九 必要なタイミングで、すっと間合いを詰めていけるかどうか…

筆者が若い頃、東京で出会った知人の実家にお邪魔させていただいたところ、母子の会話がとても丁寧で、世の中にはこういう母親と息子の関係もあるのだと驚いたことがありました。敬語が基本の言葉遣いと、相手を気遣う物腰が、実にきちんとしていたのです。

浜松の下町育ちで方言丸出しの自分には、何だか似合わないところに来てしまったなという居心地の悪さがありました。しかし、親しい仲だからこそ礼を尊び、所作を懇ろに保つというのは、なかなか格好いいものだなと感じたのも確かです。

続きを読む

其の八 人間関係の間合いを、どう取れば良いのか…

徒然草を読んでいると、「それそれ、そういう事ってあるよね」とか、「そうそう、それを自分も言いたかった」などと、しみじみ感じさせてくれる場面に出会います。読者にそう感じさせる理由は、やはり兼好法師が持つ鋭い人間観察眼にあります。

その観察眼は、人間関係の間合いにも及びました。私たちは人との関わり合いの中で暮らしているのですが、距離が近すぎたら五月蠅(うるさ)く思われ(思い)、遠すぎたら冷たく感じられて(感じて)しまうのですから、程良い距離の取り方くらい難しいものはありません。

続きを読む

其の七 客が去って、すぐさまドアロックを掛けるようでは不粋極まる

人との交流において、お迎えの恭(うやうや)しさは勿論大事ですが、お見送りの丁寧さも忘れてはなりません。出会う時よりも、別れ際の態度にこそ人格が現れるわけで、そこにわざとらしくない自然な残心を込められるかどうかです。

現代においても、きちんと残心の籠もった見送りの出来る人がおります。お客様が次の角を曲がるか、通り過ぎるところまで見送ることを礼儀とするなど、ちゃんとしたお店ほど残心が出来ているものです。客としても、店の人の残心を背中に感じますから、今一度振り返ってお辞儀をすることになります。

続きを読む

其の六 人がやって来ることを予期して焚いていたお香ではないから奥ゆかしい

陰暦(本暦)の「長月二十日のころ」は、年によってズレがあるものの、新暦(現在の暦)では10月下旬あたりとなります。長月は夜長月ともいわれ、まださほど寒くない中、秋の夜長に月を愛でるのに相応しい時期です。

その頃兼好法師は、「ある貴人に誘われて夜が明けるまで月見して歩くことが」ございました。すると散策の途中、「貴人に思い出される所があって、(従者に)取り次ぎをさせてから、ある家にお入りになった」のだそうです。昔はスマホも何もありませんから、伝言や依頼に従者の取り次ぎが不可欠でした。

続きを読む

其の五 残心~どこまでも心を込めようとする日本人らしい所作

「残心」という心得があります。相手に対し、あるいはその場に対して心を残し、いっそう完成度を高めていく。そういう、どこまでも心を込めようとする日本人らしい大事な姿勢が残心です。

残心は、単に「そこに意識を留める」という程度の事ばかりではありません。真剣な氣迫によって、精神エネルギーを向こうまで突き通すということこそ本来の残心であり、それによってトドメを刺すことにもなります。

続きを読む

其の四 怒りの手紙が返って来るようなら、まだ私への想いが続いているはず…

四季の移ろいがもたらす豊かな自然は、日本人の持つ細やかな感性を育みました。季節毎の風情を味わえるところに、我が国特有の人生観や幸福感が存在したのです。その季節感は、会話において季節の挨拶から始める日常生活や、手紙において時候から書き起こす作法を生みました。俳句に必ず季語を入れることも同様です。

続きを読む

其の三 元来の「おもしろい」は明るい様子のこと…

公家から武家へと時代の主役が移行する中、兼好法師はそれら両方の立場を繋ぎながら、自然や世の中、人間に対して鋭敏な感性を発揮しました。その豊かな観察眼を第三十一段のエピソードからご紹介し、兼好法師の細やかな人間性を味わってまいりましょう。

続きを読む

其の二 日本人にとって、謙虚さは自信の裏返し

《徒然草:序段》 「する事もなく暇でならない。退屈な心のまま、一日中硯(すずり)に向かって心に移り行くつまらない事を、とりとめもなく書き付けてみたところ、何とも変な気持ちになってきた。端から見たら、きっと気違いじみている …

続きを読む