其の十三 我が国が「一続きの国家」であると認められ得る根拠とは…

高校3年生のときのこと、教室の後ろに張られている「世界史年表」を見ていて、ふと思った事がある。世界の国々は、国家そのものが何度も替わっている。その中で、日本だけは昔から今に至るまで日本のまま変わらないのではないかと。

年表を見る限り、日本は「一続きの国家」であると感じてならない。でも、その理由が分からない。そこで、日本史の授業のときに質問してみた。教師は、苦しい作り笑いをしながら顔を真っ赤にした。そして、しどろもどろに国家の要件だの、日本の歴史にも紆余曲折(うよきょくせつ)があるだのと喋っているのだが、納得のいく核心を突いた答は何一つ無かった。

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其の十二 そもそも日本の歴史や伝統は、欧米のモノサシでは図りきれない…

吉野ヶ里遺跡の主祭殿に、“高次元のまつりごと”が復元・展示されているということを述べた。見えない世界の霊性を、いかにして見える世界の政治に反映させるか。それは古今東西、人間社会における必須の課題であった。

我が国の場合、高次元のまつりごとは、宮中祭祀によって現代に至るまで継承されてきた。天皇陛下と宮中祭祀、さらに天皇の権威について考察を深めていこう。

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其の十一 まつりごと(祭)と、まつりごと(政)は一つ…

佐賀県にある吉野ヶ里遺跡に行かれたことがあるだろうか。そこでは、日本の国柄(くにがら)の祖型を見ることが出来る。弥生時代の水田稲作によって人口が増え、集落(ムラ)が興り、それが集まって一つのクニが形成されていく様子を感じ取ることが出来るのだ。

吉野ヶ里遺跡には、復元された建物群がある。その中で、最大規模のものを「主祭殿」と呼ぶ。その最上階は祭祀の間で、その下が政治の間となっている。

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其の十 「天皇の祈り」のお姿に、国民がお手本とすべき基本がある…

天皇陛下は、いつも国家の繁栄と国民の幸福を祈られている。「天皇のまつり」すなわち宮中祭祀について、皇學館大学特別教授で神道学博士の松浦光修(みつのぶ)氏は、次のように述べている。

「毎朝、天皇陛下の代理の侍従が「宮中三殿」にお参りし」、その間「天皇陛下も「おつつしみ」になっている」(2025松浦光修『そうだったのか!日本の神さま』株式会社経営科学出版p.58.)

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其の九 全体構想者は天才、部分を掘り下げる研究者は秀才…

現代科学の基本は、シンプルロケイションにある。研究の「対象」と「場」を、可能な限り部分化・単純化・局在化・専門化していく。

研究にあたっては、常に根拠を求め、それを物的な証拠から見出し、数値で表せる客観性(データ)を重んじ、(条件が一緒なら同じ結果が出るという)再現性を強く求めていくことになる。

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其の八 人間、国家、宇宙、全ては生命体…。生命原理による全体観を説く!

やまとことば国学の師・河戸博詞先生に、同学の友つまり「朋友(ほうゆう)」がいた。それが三上照夫氏である。『天皇の国師 賢者三上照夫と日本の使命』という本によれば、三上氏は「天皇の国師」というべき人物で、昭和天皇の相談役を務めていたという。

同書の著者・宮崎貞行氏は、三上氏について次のように紹介している。

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其の七 国民一人一人が高い霊性を養うということ。それが、いかに大切か…

大和言葉の師匠である河戸博詞先生は、国学者の家に生まれたと聞く。
先生は、国学ばかりでなく、漢学や西欧思想にも通じておられた。

学歴として、陸軍士官学校を首席で卒業されているから大変な秀才だ。
陸軍将校への指導が先生の任務であり、帝王学にも長けておられた。

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其の六 君一人が政治家になるだけではダメ、政治家を育てる側になりなさい…

松下政経塾には、「アホでもかまへんから、林を採っておくように」という松下塾長の「鶴の一声」で入らせてもらった。政経分野の俊才揃いの中で、私は鍼灸の勉強しかやっていないのだから、塾長の一声がなければ合格は不可能だったろう。

入塾してしばらく経った頃、国学の師である河戸博詞先生が、わざわざ松下政経塾を来訪してくださった。河戸先生のお仕事の事務所は東京の新宿、本宅は神奈川県の二宮にあり、その中間の茅ヶ崎に松下政経塾があった。

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其の五 連絡も無く突然やって来る、それが昭和的訪問の方式…

松下政経塾には第1期で入塾した。最初の塾生である以上、先に受験している先輩がいない。従って、いわゆる受験対策が分からない。何を勉強しておいたら、合格に向けて役に立つのか全く不明である。

そこで、ここは意識を深めておくしかあるまいと思い、自分の進むべき道を覚った場所である「釈迦の霊泉」に急遽行くことにした。上野から鈍行列車を乗り継いだため大幅に時間がかかり、夜になってやっと到着。

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其の四 師事すべき相手を見付け、しっかり学ぶことは重要、それも若い内に!

群馬県の山奥、月夜野町にある一件宿の温泉「釈迦の霊泉」。筆者はそこで開かれた、とても小さな合宿に参加し、それ以来、次々に大切な師を得た。

大和言葉の師である河戸博詞先生からは国学を学び、文明法則史学を大系化された村山節先生からは東西文明の壮大な交代を学び、陽明学の大家である安岡正篤先生からは東洋思想の神髄を学ぶことになったのだ。

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