陰と陽は同時に存在し、それぞれ強くなったり弱くなったりするのですが、陰だけ・陽だけとはなりません。陰が強めのときと陽が強めのときが巡るのであって、一方が勝ち残り、もう一方が消え去るということはないのです。
さらに、陰の中に陽が有り、陽の中にも陰が有ります。これを「陰中陽有り、陽中陰有り」といい、陰陽論は立体的な構造を持っております。
陰と陽は同時に存在し、それぞれ強くなったり弱くなったりするのですが、陰だけ・陽だけとはなりません。陰が強めのときと陽が強めのときが巡るのであって、一方が勝ち残り、もう一方が消え去るということはないのです。
さらに、陰の中に陽が有り、陽の中にも陰が有ります。これを「陰中陽有り、陽中陰有り」といい、陰陽論は立体的な構造を持っております。
それから、中国思想の特徴の第七として「根底に循環の思想がある」ということを付け加えておきます。東洋医学の原典である『黄帝内径』に、「陰を重ねれば必ず陽になる。陽を重ねれば必ず陰になる」と書かれています。
『孫子』と並ぶ兵法書とされているのが『呉子』です。『呉子』に「兵を動かすときの最も大きな間違いは、もたもたしていて機会を逃してしまうことにある」と書かれています。
虫や魚の中に、獲物が近付いてくるのをじっと待っていて、捕まえられるチャンスと見たら、タイミングを逃さないで一瞬で捕捉してしまう“天才ハンター”たちがいます。相手に気付かせないよう息をひそめているときの静かな様子と、瞬殺するときの素早さの落差には、本当に驚くばかりです。
まだまだ中国思想には特徴があります。その第六は兵法の存在です。勝つための教えである兵法には、先手を打つこと、大局を整えること、情報を得ること、チャンスを逃さないこと、虚を突くことなどの基本があります。
中国思想の特徴の第五は、多面的人間観を持っているということです。性善説と性悪説の双方を兼ね備えることで、人を善・悪どちらか一面に固定させません。善い面と悪い面の両方を、多面的に観ているのです。
誰にでも、困っている人を見たら放っておけない「仁の心」があります。目の前の人を見捨てるわけにはいかないと思う心に基づくのが、人間の本性を善と観る性善説の人間観です。これを唱えた代表的な思想家が孟子です。
中国思想の特徴の第四は、「山の思想」と「谷の思想」があるということです。「山」は堂々とした威厳であり、そのバックボーンとなっているのが「山の思想」です。先述の「修身斉家治国平天下」を教える儒学が、その人の「山」を作り上げます。
中国思想には、いくつかの特徴があります。それらを知りますと、思想の全体像を掴めることになります。
その第一は、今述べた通り経世的、現実的であるということです。例えば『論語』に、「民から信頼を受けることなら出来るが、民に情報をしっかりと知らせるのは難しい」と書かれた箇所があります。指導者が民衆に対して、自分という人間を信じて貰うことは可能だが、伝えたい内容を細かく知らせるのは不可能に近いという意味です。
◆中国思想概論◆
◇インドは宇宙的、チャイナは政治的、日本は綜合的◇
本章では綜學の各論として、中国思想と仏教思想について述べます。まず中国思想からですが、既に武士道のところで朱子学などに触れています。ここでは中国思想の全体像を、概論的に解説することにします。
本章では、綜學の三本柱である「知の文明法則史学」「情の大和言葉」「意の東洋思想」を解説し、三つ目の「意」の内容として武士道を述べてきました。
武士道精神は、決して過去のものではありません。「知の文明法則史学」のところで説明した800年周期論を思い起こして下さい。地球文明は大きく「東」と「西」に分かれ、両者は800年毎に交代します。入れ代わって、それまで高調期(活動期)であった側は低調期(休息期)に入り、低調期であった側は高調期に転換します。