その98 地図を読み取り、勝つためのポイントを浮かび上がらせよ!

「九変」は、臨機応変による用兵の原則です。九変には大きな効用があり、その「利益に精通する将軍」が「兵の用い方を知っている」指揮官となります。

もしも九変に精通していない場合、たとえその将軍が「地形を知っていたとしても、地の利を得ることは不可能」です。単に地形を知っているということと、地の利を得るということは違うのです。

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その97 九変の術を知らない将軍は危うい!

刻一刻と動いている状況に対し、着実に勝利のポジションを得られるよう、臨機応変に部隊を動かさねばなりません。そのための用兵の原則が「九変」であり、その補足に五原則がありました。

そこで、九変をもう一度おさらいしておきます。
一 高い陵(おか)にいる敵に向かってはならない。
二 丘を背にした敵を迎えてはならない。
三 隔絶した敵地に留まってはならない。
四 わざと逃げる敵を追ってはならない。
五 精鋭な敵を攻めてはならない。
六 おとりの敵兵に食い付いてはならない。
七 母国に帰ろうとしている敵を留めさせてはならない。
八 敵を囲む場合は完全包囲してはならない。
九 窮地に陥った敵に迫ってはならない。

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その96 指揮系統は一本でも、現場の柔軟な判断が認められていること…

九変の補足として五原則(第一から第五)が説明されましたが、孫子はさらに解説を加えます。念入りに述べることで、一層の注意を促しているのでしょう。

「そういうことから、道に通ってはならない場合が」あるというのは、そこに道さえあれば行軍が楽になり、警戒を怠って進軍したり駐屯したりしてしまうことへの注意です。道路ならば、どこを通っても大丈夫だろうと安心しがちですが、通ってはならない危険な道路もあるということを忘れてはなりません。

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その95 絶体絶命の地では、死中に活を求めて奮戦するしかない!

臨機応変の「用兵の原則」である九変に続いて、孫子はさらに以下の5点について説明します。これらは、九変の補足ともなっています。

《孫子・九変篇その二》
「用兵の原則として、将軍は君主の命令を受けて軍隊を編成する。だが、険しくて車が通り難い地には駐屯してはならない。四面から敵が集まる地では外交交渉に努めよ。隔絶した敵地には長く留まってはならない。敵に囲まれた地では謀(はかりごと)を用いよ。絶体絶命の地では思い切って戦え。

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その94 相手の腹を据わらせず、敵を常に動揺した心理状態に置く!

用兵の原則である「九変」の7番目は、「母国に帰ろうとしている敵を留めさせてはならない」という心得です。これから母国に帰ることになっている敵は、気持ちが先に帰郷しています。いわゆる里心が起きることで気弱になっているとも言えますが、反面、帰心に駆られて強くなってもいます。

この戦闘に勝てば、必ず故郷に帰れるという気持ちが、持てる力を振り絞らせます。それで、そういう帰国途上の敵の前に立ちふさがり、無理に押し留めてはいけないというわけです。また、どのみちいなくなる敵ですから、そのまま帰らせればいいとも言えましょう。

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その93 わざと逃げる敵兵や、おとりの敵兵に要注意!

陣を構える場合、こちらが高地を取って低地の敵に向かうべし。逆に、高地に敵が陣取っている場合は攻撃してはならないという原則の補足を述べます。

こちらが高地を確保すれば、兵士に勢いが付くばかりでなく、矢を射たり投石したりする際、物理的に有利となってより遠くまで攻められます。

また、確保した丘を背にし、そこに陣取れば、背後の心配が無くなり、集中して前へ進めます。見晴らしも良好だから、敵軍の動きを的確に捉えることが出来ます。

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その91 松下幸之助塾長は、サロンではなくパーティを起こされたかった…

さて、サロンとパーティという言葉があります。サロンは同好の士が三々五々集まって意見を交換する場であるのに対して、パーティは共通の目的の下に事業を進める活動体を意味します。

文学サロンならば、小説家が集まる喫茶店などが場になっております。そこに活動のリーダーはいませんし、組織があるわけでもありません。しかし、そのサロンから文学運動が起こされて機関誌の発行に至れば、パーティ(党)と呼ぶべき活動体となります。

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その90 相手の充実度を、どうやって見抜くか?

戦う前に勝つための4つの基本として、自軍の「士氣」を高めることと「心理」を静めることの必要性について述べました。後の二つは「活力」と「応変」です。

「活力」は兵士の体力のことで、その充実は敵よりも早く戦場に到着し、有利な地に布陣することによって得られます。味方は「安楽な状態」に身を置き、移動で疲れた体力を回復させられます。ところが敵は、後れて来るので疲労したままであり、布陣も不利とならざるを得ません。

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その89 敵の氣分がストンと下がるタイミングを窺え!

昔は日の出から新しい一日が始まりました。政治も、朝議や朝廷という熟語が示すように早朝に行われるのが普通で、日の出と共に臣下が天子に拝謁して執り行なわれました。

そうして午前中に頑張れば、昼頃にはどうしても気持ちが弛んできます。「朝の氣分は鋭敏だが、昼の氣分は弛惰と」なります。さらに「夕方の氣分」ともなれば、「もう帰って休みたくなる」というのも当然でしょう。

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