この世界のあらゆるものが、変化し活動しています。止まっているように見える山々も、造山活動によって動いています。小は量子や原子から、大は太陽系や銀河系に至るまで、一切が活発に動いているのです。この変化活動こそ大宇宙の本質であり、動くことによって一切が進化発展していくわけです。
勝つための思考と行動~東洋の英知「孫子の兵法」
その77 止むは病む、会社や組織も動きが鈍くなれば病んでいく
固定化されない生き生きした組織を、水の姿から学ぶという話の続きです。その一例に、時と場に応じたプロジェクトチームの編成があると述べましたが、もっと持続する組織を起こす際の要件について補足しておきます。
それは、生命体をお手本とする組織をつくる際に必要な条件のことです。そもそも水は生命の源であり、水に学べば自ずと生命体をお手本とすることになります。
その76 流れを読み取る観察眼と、それに応じて活動出来る機動力を
「水に定まった形は無い」ように、優れた戦闘集団には固定化された動きがありません。その固定化されないで動ける集団に何が必要かというと、潮の変わり目といった流れの変化を読み取る観察眼と、それに応じて活動出来る機動力です。前者を指導者が持ち、後者が組織に備われば、きっと柔軟な動きが可能となるでしょう。
その75 水に決まった形が無いように、組織にも決まった動きは無い
老子も、水の性質を誉め称えています。「上善(最高の善)は水の如し」と語り、水の持つ真の強さを尊びました(『老子』第八章)。
水は万物を養う元として有り難がられる存在でありながら、他と高さを争い合うことはなく、誰もが嫌う低いところに位置しています。いつも低いところへ向かうことから、その一徹な姿勢が信じられます。
その74 圧倒される情勢が、未来永劫に亘って続くということは無い
勝利の真因は固定化されていない「無形」にあるとのことですが、どうしたら敵に読み取られぬ「無形」となれるのでしょうか。孫子は、それを水に例えて説明します。水の如く形に囚われず、しなやかであれと。
必ず低いところに向かって行く水は、方向性を見失うということがありません。しかも相手に合わせつつ、いつのまにか主導権を手にして敵を制します。
その73 勝利の本当の理由は、なかなか民衆には分からない
さて、敵も主導権を握るため、情報を得ようとしてこちらに探りを入れてきます。それを防ぐには、兎に角「無形」になれと孫子は教えます。
無形とは、決まった形式の無い状態のことです。定型化された編成によって、固定化された反応しか出来ないといった、相手にすぐ動きを読み取られてしまうような軍隊とは違います。流動的で変化に富み、自由自在の動きが出来るのが、無形の持つ強靱さなのです。
その72 相変わらず、陣取り合戦に明け暮れているのが世界の現実
それでは『孫子』虚実篇その六の解説をします。戦いの場所と戦いの日をこちらが決めることで、如何にして主導権を握るかがその主題であり、「知るべき」ポイントは次の4点です。
その71 日常的に領空・領海への侵入行為を繰り返して来るのはなぜか?
戦いの場所と戦いの日をこちらで決められれば、戦争の主導権を握れるということでしたが、一体どのようにして場と時を定めればいいのでしょうか。
それについて孫子は、次の四つを知れと教えます。戦局における敵味方の優劣、敵の出方や動き具合、地形上の不利な場所と有利な場所、敵陣の充実したところと虚弱なところ。これらを予(あらかじ)め知っておけば、主導権を握れることになると言うのです。
その70 勝利は、人の努力でつくり出すもの
では、この『孫子』虚実篇その五を、もう一段分かり易い言葉で訳してみます。
「戦う場所と戦いの日は、こちらが決め、敵に知らせてはならない。そうすれば戦いの主導権を握って、遠く離れた場所で戦うことも出来るようになる。
その69 戦う場所と戦いの日、これらを敵に決められてはならない!
敵を十に分散させ、味方は一つに集中する。敵が「虚」、味方が「実」となれば、常に圧倒する勢力で敵を倒すことが可能となる。そういう状況をつくるには、戦いの場所を知られないことが肝腎だ、というところまで述べました。
さらにもう一つ、「戦いの日」を、こちらだけが知っているということが重要です。戦う場所と戦いの日、これらを相手に決められてしまうのではなく、こちらが決めていくのです。それを「主導権を握る」と言います。