No.54 命も、官位も、金もいらない

世間から気の毒に思われるくらいで丁度いい

為政者というものは、贅沢を戒め、世間から気の毒に思われるくらいでなければいけない。そう諭したのは、明治維新第一の英傑・西郷隆盛です。

「万民の上に位する者は、慎み深く、品行を正しくし、驕奢を戒め、職務に努めて国民の手本となり、人々からその働きぶりが気の毒に思われるくらいでなければ、政府から出される命令は行われ難いものだ。

ところが、まだ新政府の草創期にありながら、為政者たちは立派な家屋敷に住み、豪華な衣服を身に纏い、美しい妾を抱え、蓄財に励んでいる。これでは維新の功業は、成し遂げられないまま終わってしまうだろう。

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No.53 権力には、人間性を変えてしまう働きがある

国民が幸せになることが指導者の喜び

さて、大道は己ばかりか、広く皆を救う道でもあります。小道では自分しか救われませんが、大道なら多くの人々を助けることが出来ます。それが政治であれば、権力者だけが富貴になるのではなく、広く民衆が幸福になる道が大道となります。

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No.52 為すべき事を為していれば、時間が解決してくれる

何事であれ、自然に剥がれるときが来るもの

老子は謙遜して語ります。この私に些か(いささか)なりとも明知(めいち)があるならば、無為自然の大道を行くのに、脇道に逸れてしまわないかどうかを心配するだろうと。明知とは、微妙なものを察知する働きのことです。それがれば、堂々と大道を進むことが出来ます。後はただ、つまらない脇道に入ってしまうことをのみ心配せよと言うのです。

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No.49 ものに動じない強靱な人生

目や舌のために生きているだけの人生

先に述べた通り、五感を司る目や耳、鼻や舌、皮膚(痛点・圧点・温点など)などの感覚器官は、本来身を守るために存在しています。この五感を正常に働かせる上で、大事な注意事項があります。

それは、五感に対して自分本体が主人でいるように、ということです。
ちょっと油断すると、いつの間にか主客入れ替わって、目や舌のために生きているだけの人生に陥ってしまいかねません。

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No.48 欲望に囚われなければ、微小なものを察知出来るようになる

根源の現象の関係を知りなさい◇

第五十二章は、三つの内容で成り立っています。第一に、根源(母)と現象(子)の関係を知りなさいということ。第二に、欲望の入り口(目・耳・鼻・口など)を閉ざしなさいということ。第三に、微妙を明察しなさいということです。

これらは、一つにつながっています。第一に言う根源を知るためには、第二の欲望に振り回されないということが必要であり、欲望を抑えられるようになれば、第三に言う微妙なものを明察出来るようになるというわけです。

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No.47 何かに命じられて働いているのではない

道は万物を生じ、徳が万物を育む

《老子・第五十一章》
「(天地自然の原理である)道は万物を生み、(道の)徳は万物を養い、物それぞれの形勢が成り立った。そういうことから、万物の中で道を尊び、徳を貴ばないものはない。

道が尊く、徳が貴いのは、何かが命じているわけではないのに、常に自ずから然りであるところにある。だから道は万物を生み、徳が万物を育て、そして生長、生育、安定、充実、養護、庇護していくのだ。

生み出しても我が物とせず、それらを働かせてももたれかからず、上に立っても支配しない。これらを奥深い徳という。」

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No.46 道とは何か、徳とは何か

儒家と道家では、道と徳の解釈が違う

ここで、中国思想の代表的なキーワードである、「道」と「徳」について述べておきましょう。老子に学ぶ上で、外すことの出来ない用語です。

道家(どうか、老子荘子などの学派)では、「道」を天地自然の原理と捉えています。大は宇宙から小は素粒子に到るまで、その物をそうさせている働きがあります。その内在する原理を、老子は道と呼びました。

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No.45 愚直に一つのことを貫けば、心身が統一され腹が据わっていく

相手にしつつも相手にしない

老子は、死地をすり抜けられる柔弱さの重要性を教えています。相手にしつつも相手にしないといった、しなやかな態度です。いちいち挑発に乗って、どうでもいい相手に絡まれているようではいけません。

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