さて、兵法は固定された方法でも、枠にはまった技術でもありません。あらゆる戦いは、その場・その時に、そこにいる人たちによって起こされる一回限りの活動です。毎回が初回なのですから、そもそも固定させたり枠にはめたり出来るものではないのです。
但し、似ている状況やパターンというものはあります。二度と同じ戦争は発生しないものの、近似した情勢は起こり得るわけで、そこから勝敗の条件を抽出し、一定の対応法(戦法)を導き出して体系化したのが兵法なのです。
さて、兵法は固定された方法でも、枠にはまった技術でもありません。あらゆる戦いは、その場・その時に、そこにいる人たちによって起こされる一回限りの活動です。毎回が初回なのですから、そもそも固定させたり枠にはめたり出来るものではないのです。
但し、似ている状況やパターンというものはあります。二度と同じ戦争は発生しないものの、近似した情勢は起こり得るわけで、そこから勝敗の条件を抽出し、一定の対応法(戦法)を導き出して体系化したのが兵法なのです。
目的の無い戦いなどというものは基本的に有り得ません。戦いには必ず敵方(てきがた)の意図や狙いがあるのですから、それを相手の立場に立って考察してみましょう。そうして「敵が必ずやって来る」であろうところを事前に予測し、十二分な準備を整えてから迎え撃てば、罠(わな)にはまった獲物のように敵を捕らえることが可能となります。
いつも敵を過大評価し、恐れおののくばかりではいけません。脳天気に高(たか)を括って油断し、敵を侮ってばかりいてもダメです。
必要なのは正しい情報と、相手の出方を読み取る冷静な判断力です。敵の狙いはどこにあり、一体何が欲しいのか。その意図は、失いたくない面子(めんつ)とは、といった事柄について全体を観ながら考察するのです。
孫子は「先に戦地に到着して敵を待てば楽だが、後から戦地に到着して戦いに向かうと苦労する」と述べました。何事であれ、先に到着すれば有利なポジションを取れます。戦闘であれば尚更で、先着して敵よりも高い位置に布陣すれば、下(くだ)りながら勢いを付けて攻撃することが出来るのだから断然有利となります。
現場には先に到着せよということですが、式典や会議、講演会や勉強会など何かのイベントに参加するときも、開始ぎりぎりに会場入りするのではなく、少し早めに到着することを習慣にしたいものです。早く着けば気持ちに余裕が生まれますし、主催者や他に参加者と挨拶を交わす時間が取れます。また、その場の雰囲気に早く馴染み、会場の空氣を主導することも出来ますから、会合参加が一層自分にとって充実した一時(ひととき)となります。
先にも述べた通り、先手準備は勝利の基本です。何事も早めに準備することを習慣にすれば、直前になって慌てることが少なくなり、落ち着いて事に当たることが出来るようになります。
反対に、後手に回ることが増えるほど、足元しか見られなくなります。大局を見失って部分に囚われ、抜けやミスが多くなっていきます。そこへまた新しい問題が舞い込んでくるのですから、ストレス満載となり、酷(ひど)ければ毎日がパニック状態となるでしょう。
こうして『孫子』兵勢篇では、「勢い」を起こすことの重要性を学びました。その最後に示されたポイントが2点あり、一つは自軍を一丸にまとめ、丸太や丸い石のような勢いを持たせよということ、もう一つは、それをよく転がる状況に置けということでした。
個々がよく繋(つな)がるネット社会の今日にあっても、事業活動であれ社会運動であれ、その時時(ときどき)の個人的な関係に頼った散発的な動きのままでは、世の中を大きく変える「勢い」を起こすことは困難です。
では、『孫子』兵勢篇の締め括りを解説しましょう。戦争は一丸となって行われる集団戦であり、個人同士のケンカとは全然違います。勝敗を決めるのは常に集団の「勢い」にあり、巧みな将軍は「勝利を勢いに求めて(個々の)兵士には求め」ません。「そこで、きっぱりと(個々の)兵士を捨てて勢いに任せ」ます。
「兵士を捨てる」という表現はただ事ではありませんが、要するに個人戦から脱出せよということです。ケンカ慣れした戦闘意欲満々な一部の兵士に頼るのではなく、部隊編成と指揮系統を整え、軍隊全体が一丸となることによって発生する「勢いに任せよ」というわけです。
先に、サロンとパーティの違いについて述べました。単なる勉強会はサロン、世の中に大きな影響を与えられる活動体はパーティであり、両者は全然違います。前者は同学・同好の者が集う場に過ぎず、何かを催しても大交流会的なイベントで終わります。それに対して後者は、同志団結の勢いを持ち、集会を開催すれば天下を動かす国民運動大会と化します。
軍隊が、よく治まるかどうか。それは部隊編成にかかっています。部隊編成の原文は「分数」で、兵士の人数とその編成を指します。それが整っていれば、兵士が個々バラバラに乱れることはありません。
兵士が勇敢であるかどうか。それは戦力の勢いにかかっています。勢いは攻撃の速さや、チャンスを逃さない集中力が左右します。速さと集中力があれば、集団そのものに勢いが備わり、兵士が怖じ気づくということはありません。