其の百二十三  プラナによって、一切が成立している…

目に見える物だけが存在(実在)であり、それ以外は虚空(空間)。普通は、そう考えられています。

しかし、一般的に東洋思想では、目に見える物と見えない物を明確に分けない傾向があります。ヨガでは全ての源泉をプラナと呼び、プラナがあらゆる所に遍満(へんまん)していることによって、一切が成立していると教えています。

「空中にあらゆる活動と生命力の源泉となる実体」があり、「ヨガではこの実体をプラナ(絶対エネルギーの意)というのである。プラナはあらゆる生命体の中に存在している。またヨガではあらゆるものに生命があると説くのであるから、プラナはあらゆる所にくまなく存在しているのである。」(1960沖正弘『ヨガ行法と哲学』霞ヶ関書房98頁)

プラナは漢字の「氣」、大和言葉の「ひ」や「み」に相当すると思われます。

氣は「米」と、米を炊くときの蒸気(气)が合わさった漢字(会意文字)で、重たい物(お釜の蓋)を持ち上げてしまうエネルギーを表します。氣が広がれば空氣や大氣になり、凝縮すれば存在ともなります。

大和言葉の「ひ」は日や火の「ひ」でエネルギーを、「み」は身や実の「み」で実在を構成する超微粒子を意味します。

また、「ひ」は強い光り(威光)である「みいつ(御稜威)」、「み」は超微粒子である「なほひ(直霊)」とも言い換えられます。

最先端の科学である量子科学が説く「量子」は、「プラナ」、「氣」、「ひ」、「み」、「みいつ」、「なほひ」などに近いものかもしれません。いずれにしても、それぞれ存在や実在、活動や変化の根源となるものであるということは確かでしょう。(続く)