其の十五 合氣は、即生活なり!

痛みや凝り、冷えや慢性的な疲労感などの症状は、バランス回復を図ろうとしている体の反応であり、同時に今のままの生活を続けていてはいけないというシグナル(兆候)でもあります。

症状を改善させるためには、一体自分のどこに偏り(不安定)があり、その原因が何なのかについて、しっかりと究明することが必要です。それによって改善策を立て、運動や呼吸、食事など生活全般を変えていけば、徐々にその効果が現れることになります。

東洋医学やヨガでは、生活の場が病院であり教室となるよう、患者や受講生に指導します。治療院や教室は、毎日通ったとしても、一日のうちの僅かの時間の施術や行法に過ぎません。治療効果を高めるためには、やはり教えて貰った指導を、ちゃんと生活に反映させることが大切です。

合氣道に塩田剛三という達人がおり、武道界では大変有名な人物です。その塩田先生と、筆者の大和言葉の先生である河戸博詞先生が、旧制中学(東京都立第六中学校)の同級生でした。そのご縁で紹介をお願いし、昭和61年2月11日に浜松で開催された紀元節講演会の講師に来ていただいたことがあります。

塩田先生は、その前日に浜松入りされ実家に泊まられました。そのおり、色紙にサインをお願いしたところ、お名前とともに「合氣即生活」と書いてくださいました。

武道も、道場に通う日だけが稽古のときではありません。稽古着を着ていないときも、武道家としての気構えや立ち居振る舞いを忘れることなく、生活そのものが合氣となるよう励んでまいります。

合氣の修行は、まさに氣を合わせるところにあり、自分と相手、自分と天地の氣を合わせてまいります。それを、生活に応用せよというのが塩田先生の教えです。

その後筆者は、合氣道養神館の静岡道場(浜松・磐田)で8年間ほど稽古します。そのとき、塩田先生は既に故人でした。頂戴した色紙「合氣即生活」は、今も自宅事務所に飾っております。(続く)