その125 互角であれば、戦ってみたくなるのが人間心理だが…

第五は「険」で、その地形を「険形」と言います。これは、敵味方どちらにも危険の多い地形です。険しい場所である険形は、隘形と同じく、どちらが先に入っているかが問われます。

そこで、「こちらが先居しているときは、必ず南を向いた高地を確保して敵を待て」と。日当たりの良い南向きの、上から下りながら攻めていける高地を占めておけば、断然有利となります。

反対に「敵が先居しているときは、退却して敵に向かっては」なりません。元々危険の多い地形である上、敵が有利な場所に先居しているのですから、戦えば不利になることは目に見えております。こだわりを捨てて退却し、次に有利な状況が来るときを待つべきでしょう。

第六は「遠」で、その地形を「遠形」と言います。これは、敵味方どちらからも遠い場所です。「遠い場所である遠形では、両軍の勢力が均衡しているときは戦いを挑み難く、戦えば不利と」なります。

勢力が互角であれば戦ってみたくなるのが人間心理ですが、結局はるばる出て行ったほうが、移動の疲れから不利になってしまいます。遠くへ遠征している隙に「漁夫の利」を得ようとして、別の国が侵略して来る恐れもあります。

兎に角、遠形という敵味方どちらからも遠い状況では、焦って攻めて行かないのが心得となります。それでも、どうしても戦わなければならないときは、囮(おとり)を仕掛け、利で釣るなどして、相手をおびき寄せる工夫が必要となるでしょう。

これら「六者は、地の利の法則」、即ち土地についての道理です。現場を指揮する「将軍の最高任務として」、よく観察し、駆け引きに知恵を使わねばなりません。(続く)