第三は「支」で、その地形を「支形」と言います。これは、こちらが行くにも不利、相手が来るにも不利という地形です。「支形では、敵が利で誘って来ても、こちらから出てはいけない」とのことで、焦らないで「一旦退却し、敵を半ばまで出させてから撃てば有利に」なります。
そもそも「支」は分かれた枝道のことです。支形は、左右に分岐していて、どちらにも行ける二股です。二股なら、どちらを進んでも良いようですが、もしも味方が半分しか進んでいない(抜けていない)ところへ、もう一方のルートを進んで来た敵によって横を突かれたら大変です。
また、二股に二分させて軍隊を進ませることも出来ますが、もしも敵が一方の道に集中して進軍しており、そして両軍衝突すれば、こちらは半分の勢力で戦うことになってしまいます。
即ち、出て行くタイミングと、どちらのルートを選ぶかが重要となるのが支形です。まさに駆け引きが問われる分、敵味方どちらにとっても簡単に進めない様子が支形なのです。この状況下に置かれた将軍は、常に敵の動きを読み、自軍の勢力を低下させないよう知恵を使う必要があるわけです。
敵も焦っています。膠着した状態を打開するため、きっと利(エサ)で誘って来るでしょう。片方のルートに囮(おとり)として出された軍隊などが利です。それに釣られ、うっかり深追いすれば、もう一方のルートを通って来た敵の本隊から猛攻撃を受けるかも知れません。
そういうときは、むしろ一旦退却し、相手に攻め込ませ、半分くらい支形から抜け出たところを狙って出撃すれば、敵を分断させられて有利になるでしょう。
敵味方どちらにとっても進むことが不利という状況は、現代の外交や事業においても見られます。情報をよく収集し、焦らず後れず、心理戦に負けないよう努めましょう。
第四は「隘」で、その地形を隘形と言います。これは、出入りが難しい狭い地形です。隘形では、そこに敵味方のどちらが先に入っているかが問われます。こちらが先ならば、そのまま兵力を充実させつつ敵を待ちます。相手が先に入っており、しかも兵力を充実させているときは、軽はずみに向かってはなりません。
隘形では、敵は必ず入り口を堅固に守っていますから簡単には落ちません。功を焦らず、敵軍の勢力が低下するときを見計らって攻めて行くのが良策です。
この入り口が狭く、出入りが難しいという状況は、新規参入が困難な様子に置き換えられます。そういう場合、団体や組織が内から弱って来るまで腰を据えて待たねばなりません。あるいは、新しい集まりを起こすなどして、新展開へ向かってこちらから仕掛けるのも方法でしょう。(続く)