※下記は1年前のレポートです。
物心が一元であるという認識。それを大和言葉では「ものごころ」という。
空海の思想においても、物心は一元である。物質面の構成要素&本質である「五大(地・水・火・風・空)」と、精神面の構成要素&本質である「識大(心)」は、一つになって融合している。それは「六大無礙(ろくだいむげ)にして常に瑜伽(ゆが)なり」(『即身成仏義』)という教えにあり、六大(物質や精神)は常につながり合って相応していると。
六大無礙に基づいて、空海が教える密教修行の基本が「三密」だ。三密は「身密」「口密(くみつ)」「意密」のことで、手や身体を使うのが身密、言葉を用いるのが口密、意識を集中させるのが意密である。
密教では、手で印を結び、真言(マントラ)を唱え、曼陀羅(まんだら)を通して大日如来(大宇宙の根本原理)と一体化する。この三密の行によって、心身一如となった己と大宇宙が一つに融合するのだ。
この三密を、大和言葉による「行」に置き換えてみたらどうなるか。あれこれ考えたところ、「ありがとお~呼吸法」というものが浮かんできた。
「あり」は活動(ラ行音)の発展(ア音)、もしくは生命(り→りい、※イはイノチ)の成長発展を表し、「がとう(お)」は難(かた)いという意味を持つことから、なかなか有り得ない貴重なお陰や出会い(ご縁)に対して「有り難い」「有り難う」と言ったのである。
「有り難う」だから「ありがとう」と読めばいいのだが、敢えて「ありがとお~」と発声することには理由がある。それは我々が「有り難う」と言ったとき、ありがと「う」ではなく、ありがと「お」と声を出しているのが普通だからである。それから、神職が神々を招いたり(降神の儀)、お帰りいただいたり(昇神の儀)するときに唱える声が「お~」であることも理由だ。すなわち、神々と一つに結ばれる音が「お」なのである。
「ありがとお~呼吸法」では、背筋を伸ばして合掌する。これが身密。そして「ありがとお~」と唱える。これが口密で、吸う息よりも吐く息のほうが長い(長息)。そして、感謝を捧げる対象をイメージする(大きいほうから宇宙・地球・日本・故郷・仲間・自分…)。これが意密。こうして、身密・口密・意密がシンプルに「大和言葉の行」としてまとまっている。※(「ありがとお~呼吸法」は、心の中で合掌し、心の中で唱えてもよい)
医学には、西洋医学や東洋医学(漢方)のほか、日本医学があるという。それを和方(わほう)や皇医学(こういがく)ともいう。林は東西融合医学が人類の健康に必須であると考え、それを「綜医學(そういがく)」と呼んできた。綜医学の柱に「やまとことば日本医学」を据えていく所存であり、その基本は「手当て・言の葉・長息・長生き」となる。
昔から治療することを「手当てする」と言ってきた。手当てして治療するのが身密、言葉によって治療するのが口密、長息しながら感謝することで心身を統一するのが意密だ。
「手当て・言の葉・長息・長生き」。この実践法である「ありがとお~呼吸法」を、これからSNSで伝えていく。リアルの講座(綜医學講座)も、令和7年4月以降に計画。毎回実践法を行いつつ、文明論や国学、武士道、空海思想なども講義に加える所存である。
(政経倶楽部・日本政経連合総研 総研レポート第81号 令和6年1月26日)