こんばんは。今日は本暦七月七日です。そろそろ空が澄み渡るべき頃ですが、それどころか東北や北陸では豪雨災害が発生しており心配が尽きません。
◆日記(8月3日~4日)
3日(水)午前中は空手道松濤會本部道場で稽古。午後6時から東京・経世志塾
で講義~「吉田松陰と松下村塾」を演題に、志士の心得と在り方について話す。
4日(木)午前中は政経倶楽部・東京支部例会に参加。講師は防人と歩む会会長
の葛城奈海先生。例会後、政経倶楽部本部会議に主席顧問として出席。
【ご案内】
☆今啓林綜學会(神戸)8月8日(月)午後6時半~9時
・世界と日本の最新情勢解説~日本政経連合総研レポート最新号等より
・じっくり味わい、人生の骨格を養う「論語」講座
・孫子の兵法・第12回「九地篇」後半~九つの土地の性格←分類が目的ではない
会場:神戸一宮神社 社務所
参加費:ビジター3000円 ※直接お越しいただいても大丈夫です。
★8月から言本師養成講座の第4期がはじまります。現在、残席が2席となりまし
た。また、来年度の第5期・第6期生も募集しております。日程など詳しくは、
語り部協会のホームページをご覧くださいませ。
peraichi.com/landing_pages/view/kataribe/
●評論・随筆●
◆敵か味方か、それのみで互いの関係を捉えてしまうことの危険性◆
正しいのは自分、相手は全くの間違い。自己と他者を明確に分け、こちらが善なら相手は悪と決め付けなければ気が済まない。そういう二元対立・二者択一的な思潮が、ネット社会の影響もあってか随分目立ってきました。
自我に目覚め、自分を正しいと思うことは、強く生きる上でとても大切なことです。「ここに存在する自分」というものを、きちんと自覚することによって意識の成長がはじまるのだから、自分に対する自信は本当に重要です。
ところが、何事も行き過ぎれば弊害が生ずるもので、自分が正しい以上、相手は間違いでなければならず、こちらが善なら向こうは悪以外にあり得ない、ということになりますと、世の中はどんどん対立・闘争の方向に片寄ってしまいます。
筆者はこの4月から高野山大学大学院修士課程(密教学専攻・通信教育課程)に入学しました。その基礎科目の中に「仏教」があり、仏教精神がこれからの世界平和に必要であると再認識しております。
大学院の教本に羽矢辰夫氏著『ゴータマ・ブッダ』[1999]春秋社という本があります。その79頁に、「自己を絶対視したうえで成立する関係は、最終的にかならず敵・味方の対立という図式におちいってしまう危険性をともなうということです。味方でいるかぎりは徹底的に擁護するが、いったん敵になると徹底的に排除するという極端な方向にすすみがちになるのです。」と書かれています。
これは、敵か味方かという見方でのみ、互いの関係を捉えてしまうことの危険性を述べたものです。このことは個人同士の対立ばかりでなく、集団や国家同士の関係にもあてはまります。
近代西欧思想による個人主義が巧く機能し、個々の競い合いが全体の発展を導いている間は良かったのですが、共通の目標や方針(国是や国家理念など)を見失いますと、社会の老朽化に伴って溜まっている人々の不満や怒りが増幅され、集団による対立・闘争が起こってくるのです。その結果、社会の分断化が進んで行きます。
では、我々一人ひとりは、どういう考え方に立てばいいのでしょうか。大切なことは、既述の通り自己を絶対視しないことと、それと同時に“自己を他者に奪われない”ことにあります。
同書の90頁に、「ゴータマ・ブッダは弟子たちにたいして、自己を明け渡してゴータマ・ブッダに絶対的に帰依するように求めていません。」とあり、さらに同書122頁に、「個人に絶対的な帰依を寄せると、集団全体の方向性がその人格だけに大きく左右されてしまいます。」とあるように、「教祖や教団」に対して自分を“売り渡して”しまわないことが注意事項となるのです。
勿論、間違いは正さねばならないし、悪を蔓延(はびこ)らせるわけにはいきません。しかし善悪二元論が行き過ぎ、善or悪という二者択一の発想しか出来ない人々で溢れるようになり、そこに強烈な教祖タイプの人間が指導者に就きますと、覇道的な恐怖政治が起こされかねません。あのヒトラーも、本人は悪だと思ってやっていたわけではないのです。
同書の186頁には、「あらゆるものが全体としてつながりあい、融合的に関係しあっており、わたしたちはそのなかの一部でありながら、しかもそれがそのまま全体の生命を生きている」と書かれ、東洋思想の全体観の必要性が示されています。慢心によって自己を絶対視しない、自己判断能力を喪失して自分を他人に明け渡さない。謙虚さと自立心の2つを同時に確立していくところに、東洋思想に基づいた人間教育の根本があると思う次第です。
兎に角最悪は、自分を明け渡したところへ、自己を絶対視させられてしまう洗脳状態でしょう。(総研レポート第63号 令和4年7月26日)