新文明のビジョンを打ち出し、対立する諸国に対して仲裁役を買って出よ!

こんにちは。大型連休に入りました。皆さん、如何お過ごしでしょうか。

私は、自宅事務所の横を通り過ぎる浜松祭りの御殿屋台のお囃子(3日~5日)を聴きながら、どこにも出掛けず、ひたすら実務と執筆の毎日となる予定です。言本師・言伝師・姓名師の試験問題を作成したり、綜學院の資料を作ったり、大学院の文献を読んだり、レポートを書いたり。もうやることがいっぱいです!

◆日記(4月28日)
・28日(金)オンライン「国学の世界観」(第二期)で講義~カムナカラ(存在)後編

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●評論・随筆●

◆新文明のビジョンを打ち出し、対立する諸国に対して仲裁役を買って出よ!◆

21世紀は東西文明の交代期であり、その最激変期は2025年あたりから2050年あたりと予測されてきた(村山節先生による文明法則史学)。この時期、国際政治の大きな動揺に伴う人口移動が心配される。気候変動や食糧不足も、それを加速させる要因となる。

世界大戦は過去の歴史であり、もう大規模な戦争は二度と起きないと希望されてきたが、振り返ってみれば人類史は戦争史そのものである。歴史=戦史という現実は、簡単には覆されまい。現代だけ日本だけは平和であるはずと思うことが、如何に空想・夢想であることか。核兵器を持たなければ自国の安全は保てないという考え方が広まるのも、世界が旧態依然たる陣取り合戦の最中(さなか)にあるからである。

覇権国家の指導者らは、まさにその陣取り合戦を仕切ろうとしている。世界は今、欧米などの西側民主主義国陣営と、中露などの権威主義国陣営と、その両陣営から一定の距離を置こうとするグローバルサウスと呼ばれる第三極の国々(インドなど)に分かれている。問題は、それらいずれのグループも、世界平和と人類共生を導くための文明的ビジョンを持っていないという点にある。要するに、世界綜和を指導出来る国家が見当たらないのだ。それどころか、軍事力と経済力を持った覇権国家らは、いずれも面子(めんつ)に拘(こだわ)り、何らかの対立が生ずれば、双方引くに引けない異常事態を起こしてしまう。

その対立が、最も強く現れているのが米中関係だ。日本総合研究所上席理事の呉軍華氏によれば、「中国が体系的に米国主導の国際秩序に挑戦しようとしているのは明らか」であり、「中国共産党に対する米社会の敵意が、空前といえるほどのレベルに達して」いるという。そして、「双方とも相手に「勝てる」という自信は有していない」ものの、「対決の姿勢がこのまま続けば、意図しない衝突が起きるリスクも高まる。」とのことである(令和5年4月14日付日経新聞「対決の決意を固める米国と中国」)。

こうした米中対立の中、中国の影響力は、はっきりと中東に及んできている。アラブ人の大国であるサウジアラビアとペルシア人の国家であるイランは対立関係にあり(2016年に国交断行)、サウジアラビアの支援国はアメリカ、イランの協力国がロシアという関係があった。この両国を仲介し、外交関係を再開させたのが中国である。そこには、中東におけるアメリカの影響力低下という要因がある。

また、ロシアはウクライナ侵攻で疲弊している。あるのは核兵器とエネルギーのみとまで評されるロシアは、コーカサス地方のアルメニアでアメリカと勢力争いを始めている。アルメニアはロシアの軍事同盟に属す国であり、そこにアメリカが接触してきていると(令和5年5月28日付日経新聞)。村山節先生は[1975]『文明の研究』六法出版社の中で、「ヨーロッパ文明の終末に文明地帯をおそう民族運動は大抵ウクライナ、コーカサス地方を震源地としていた。」(252頁)と述べている。この地域の動きからも目を離せなくなってきた。

東アジアでは朝鮮半島を注視したい。村山先生は[1980]『波動進化する世界文明』六法出版社の中で、「朝鮮半島は極東の火薬庫である」(175頁)と述べている。今また南北対立の様相が激しくなり、北朝鮮は中露が、韓国はアメリカが支援するという構図が浮き出てきている。この“火薬庫”に火が付いたとき、それに合わせて中国による台湾侵攻が起こされる可能性もある。「小国の日本は行司役に徹せよ」という村山先生の教えを忘れてはならない。我が国は、まず新しい文明のビジョンを打ち出し、対立し合う国々にパイプを作り、世界の仲裁役を買って出るべきである。その際、各国の面子を忘れるようではいけない。(政経倶楽部・総研レポート第72号 令和5年4月29日)