その101 アメはエサに過ぎず、相手の狙いはムチに潜んでいる…

「智者の思慮は、必ず利と害をまじえている」という考え方は、味方が有利になるよう誘導する際にも用いられます。次のように、敵に対して利と害をまじえつつ巧みに仕掛けるのです。

・敵の諸国を屈服させるには害を与える。
・敵の諸国を使役し、疲れさせるには事業を仕掛ける。
・敵の諸国を(こちらに)趨(はし)らせるには利で仕向ける。

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その100 利の中に害を思うは成功の元

何事であれ、それを通して利益のみを得るということは無く、必ずその中に何らかのマイナス面(失うもの)が潜んでいます。また、損害を被るばかりという事も案外少なく、その困難を通してプラスになる利点が伴っているものです。

そのことを孫子は「智者の思慮は、必ず利と害をまじえている」と言いました。利害を二者択一的に捉えるのではなく、利と害を多面的にまじえ、利の中に害を見、害の中に利を見よとのことです。

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その99 損害の中から希望を見出し、転んでもただでは起きない!

我々の意識というものは、どうしても一方に偏ります。少し調子に乗ると、どこまでも利益が膨らむことを夢見、一部分でも巧くいかなくなると、このまま損害が出て終わってしまうのではないかと気落ちします。

指導者が、そんな単純な思考に留まっているようではいけません。プラス面とマイナス面、則ち利益と損害(被害や害悪)の両方を普段から意識することが必要です。どちらか一面だけを見てよしとするのではなく、常に全体を観るよう心掛けるのです。

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その98 地図を読み取り、勝つためのポイントを浮かび上がらせよ!

「九変」は、臨機応変による用兵の原則です。九変には大きな効用があり、その「利益に精通する将軍」が「兵の用い方を知っている」指揮官となります。

もしも九変に精通していない場合、たとえその将軍が「地形を知っていたとしても、地の利を得ることは不可能」です。単に地形を知っているということと、地の利を得るということは違うのです。

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その97 九変の術を知らない将軍は危うい!

刻一刻と動いている状況に対し、着実に勝利のポジションを得られるよう、臨機応変に部隊を動かさねばなりません。そのための用兵の原則が「九変」であり、その補足に五原則がありました。

そこで、九変をもう一度おさらいしておきます。
一 高い陵(おか)にいる敵に向かってはならない。
二 丘を背にした敵を迎えてはならない。
三 隔絶した敵地に留まってはならない。
四 わざと逃げる敵を追ってはならない。
五 精鋭な敵を攻めてはならない。
六 おとりの敵兵に食い付いてはならない。
七 母国に帰ろうとしている敵を留めさせてはならない。
八 敵を囲む場合は完全包囲してはならない。
九 窮地に陥った敵に迫ってはならない。

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その96 指揮系統は一本でも、現場の柔軟な判断が認められていること…

九変の補足として五原則(第一から第五)が説明されましたが、孫子はさらに解説を加えます。念入りに述べることで、一層の注意を促しているのでしょう。

「そういうことから、道に通ってはならない場合が」あるというのは、そこに道さえあれば行軍が楽になり、警戒を怠って進軍したり駐屯したりしてしまうことへの注意です。道路ならば、どこを通っても大丈夫だろうと安心しがちですが、通ってはならない危険な道路もあるということを忘れてはなりません。

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その95 絶体絶命の地では、死中に活を求めて奮戦するしかない!

臨機応変の「用兵の原則」である九変に続いて、孫子はさらに以下の5点について説明します。これらは、九変の補足ともなっています。

《孫子・九変篇その二》
「用兵の原則として、将軍は君主の命令を受けて軍隊を編成する。だが、険しくて車が通り難い地には駐屯してはならない。四面から敵が集まる地では外交交渉に努めよ。隔絶した敵地には長く留まってはならない。敵に囲まれた地では謀(はかりごと)を用いよ。絶体絶命の地では思い切って戦え。

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その94 相手の腹を据わらせず、敵を常に動揺した心理状態に置く!

用兵の原則である「九変」の7番目は、「母国に帰ろうとしている敵を留めさせてはならない」という心得です。これから母国に帰ることになっている敵は、気持ちが先に帰郷しています。いわゆる里心が起きることで気弱になっているとも言えますが、反面、帰心に駆られて強くなってもいます。

この戦闘に勝てば、必ず故郷に帰れるという気持ちが、持てる力を振り絞らせます。それで、そういう帰国途上の敵の前に立ちふさがり、無理に押し留めてはいけないというわけです。また、どのみちいなくなる敵ですから、そのまま帰らせればいいとも言えましょう。

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その93 わざと逃げる敵兵や、おとりの敵兵に要注意!

陣を構える場合、こちらが高地を取って低地の敵に向かうべし。逆に、高地に敵が陣取っている場合は攻撃してはならないという原則の補足を述べます。

こちらが高地を確保すれば、兵士に勢いが付くばかりでなく、矢を射たり投石したりする際、物理的に有利となってより遠くまで攻められます。

また、確保した丘を背にし、そこに陣取れば、背後の心配が無くなり、集中して前へ進めます。見晴らしも良好だから、敵軍の動きを的確に捉えることが出来ます。

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