其の百五十六 内なる力は、他を頼り、外ばかり見ていたら湧いてこない…

沖ヨガによる「病氣を治すための基本となる考え方」は、自分を治す力は、自分の内にあるというところにあります。このことに気付かず、いつも他を頼り、外ばかり見ておりますと、心身の慢性的な不調はなかなか好転しません。

そもそも医療人や治療家の役割は、人の内に宿る力(自然治癒力)を引き出すところにあります。物事を正しく見ていけば(正見・しょうけん)、その事実を自覚することになるはずです。

「正しい病気のなおし方は、正見に基き、自らなおる力は内にありという悟りに基いてなおしてゆくわけである。

正しいなおし方というのは、生活を正し、刺激を整え、内の力を喚起して、自然になおるように仕向けることである。

自然になおるにはどうしたらよいかというと、他物に頼らずに、自力でなおるように工夫努力することである。」
(1960沖正弘『ヨガ行法と哲学』霞ヶ関書房p.130.)

正しい治し方は、自然治癒力を生かしていく治し方です。そのためには生活を正さねばならず、言葉や呼吸、食事などが重要になります。

具体的には、否定的な暗い言葉や、攻撃的で排他的な言葉を少しでも減らし、明るく元氣な言葉を多くすることです。また、短くて浅い呼吸よりも、長くて深い呼吸を意識的に増やしましょう。息を吐く時もお腹を膨らませている「密息」は、呼吸力を高める上でとても有効です。

それから、季節に合った食べ物や自分に合った食べ物をよく吟味しつつ、食物を作ってくれた人や調理してくれた人に対する「ありがとお~」(感謝)の心を忘れないことが大切です。食物自身への感謝の念も欠いてはならないことです。

その上で、体操やストレッチ、武道やスポーツなどを、バランスよく鍛錬・稽古することで心身に刺激を与え、「内の力を喚起して、自然になおるように仕向けること」が肝腎なのです。そうすれば、他物に頼らず、自力で治すことが可能となるわけです。(続く)