呼吸のことを大和言葉で息(いき)と言います。「いき」の「い」は生き生き、行く、命(いのち)の「い」で前に出て行く積極性を、「き」はきつい、厳しいの「き」で強い様子を表しています。即ち「いき」は命の強さ、命の強い働きを意味しているのです。沖正弘導師は、次のように息の重要性を述べました。
「人間はこの世に生れでるとともに息をして、息がとまると死んでしまうので、呼吸は人間の生命であるとも言える。古来「息」は非常に重要視されて、「息する」事実と「生きる」事実の間には重要なつながりがあると考えられて、「息する」ことがそのまま「生きる」という言葉になっている。また深く長い息が健康によいことに気付いて、「長息」が「長息き」の意味になっている。」(1960沖正弘『ヨガ行法と哲学』霞ヶ関書房97頁)
息をするから生きている、生きていられるのは息をしているから、という考え方は、大和言葉の意味からも当然のこととなります。息することと生きていることは、同根の大和言葉なのです。そして、長い息が長生きを導くという言葉の解釈も、まさにその通りです。
「このように「息が生命である」という観察に立脚した思想が生れたほどで、人間の生命の働きの中で呼吸は最も重大な役割を果すものなのである。呼吸は人間ばかりでなく生物のすべてが営むもので、呼吸が絶えるとすべてのものが枯死してしまう。人間はある期間水を飲まず、何も食べずにいても、生命を持続することができるけれども、たとい数分間でも息をしなければ、生命を維持することはできない。」(1960沖正弘『ヨガ行法と哲学』霞ヶ関書房97頁)
呼吸は全ての生物が己を維持するために営んでいることであり、息が途絶えてしまうと生命体は死んでしまいます。人間は、飲食をしなくてもある期間生きていられますが、呼吸や心臓が止まれば数分間で脳細胞は生きていられなくなるそうです。本当に「いき」は生命を維持する上で大切な作用であり、だからこそ呼吸を強く保たねばならないわけです。(続く)