決めた事は余程のことが無い限り、きちんと最後までやる。そういう人は、やり通すこと自体が習慣化しています。「なぜ始めたのか」という原点が潜在意識にしっかり刻まれており、行動や実践が無意識の領域に組み込まれているのでしょう。沖導師は、次のように述べます。
「潜在意識は習慣によって無意識化したものであるから、これを改造強化するには、まず改造しようと思う方向に最初は意識して繰り返し繰り返し反覆することによって、遂にはそれが内在力(信念)となるもので、この自己化の秘訣は反対意識に邪魔されないように、できるだけくつろいでやることである。」(1960沖正弘『ヨガ行法と哲学』霞ヶ関書房93~94頁)
たとえば自転車に乗る人は、乗りながら無意識に景色を観たり、ものを考えたりしています。運転に意識を集中していなければ危ないということはなく、向こうから来る自転車とすれ違うことが出来るし、赤信号ならサッと止まれます。それが無意識化ということであり、安全に乗ることが習慣化していれば、運転技術は潜在意識にまで刻まれたということになります。
しかし、いきなり自転車に乗れる人は殆どいません。三輪車なら倒れないから怖くないけれども、自転車は二輪で不安定だから不安です。最初の内は肩や腕に力が入り、何回も転びます。でも、ちょっとずつ乗れるようになり、やがて3メートル、10メートルと走行距離が長くなっていき、とうとう普通に乗れるようになるわけです。
恐がっていても仕方ないので、とにかく最初は意識してサドルにまたがってペダルをこぐしかありません。でも、それを繰り返し続けていきますと、自信を持って乗れるようになります。次第に自信となり、自転車運転技術が自己に内在する一つの能力となるのです。
この「自己化の秘訣」は、「反対意識に邪魔されないように、できるだけくつろいでやること」だそうです。反対意識というのは、どうせダメだとか、やってもムダだとか、自分に出来るわけがないといったマイナス思考のことです。
心身が疲れているときほど、マイナス思考に偏りがちで、決めていた事、続けている事であっても休みたくなります。よほどの寝不足や体調不良、病氣や怪我ならば休養・療養するべきですが、そうではなく、心身が少々疲れたというくらいの場合は、むしろ練習や稽古で身体を積極的にほぐすのも方法です。
その際、悲壮感を持ってやるのではなく、普段よりも半分くらいの力で、氣軽に休憩も入れながら、楽しんで鍛錬してみては如何でしょうか。それは、精神の疲労回復のために大事だと思います。(続く)