其の八十五 どうしても上達できない場合、持ち分(天分)を考察してみるといい…

一口に音楽が好きといっても、歌うことが好きなのか、楽器の演奏が好きなのか、音楽に合わせて踊ることが好きなのか、作曲や編曲が好きなのか、あるいはそれらの組み合わせが好きなのかなど、人によって好みはいろいろな分野に分かれます。いずれにせよ、その一番好きなところに辿り着くべきであり、そうでないと上達が滞ってしまうということを沖ヨガの沖正弘導師が指摘しています。

「練習を重ねれば、ある程度までは誰でも上達することができるだろう。だがそれ以上はどうしても上達できない場合は持ち分(天分、素質、気質、体質)を考察すべきである。例えば、同一の音であっても、人によりそれぞれの感じ方や感じるところがちがうのである。つまり、音色に敏感な天分もあれば、メロディに敏感な天分もあれば、リズムに敏感な天分もある。そうするとめいめいはそれぞれの天分を伸ばしていったほうがよいのである。」(1960沖正弘『ヨガ行法と哲学』霞ヶ関書房79頁)

「天分」とは天からいただいた我が持ち分、「素質」は先天的に与えられている性質、「気質」や「体質」は本来持っている心身の特質のことです。音楽にも種々の天分があり、音色、メロディ、リズムなどのどれに敏感なのかによって、天分の伸ばし方が違ってくるというのです。

そして、天分を発見するのは、豊富な体験と広い学びが必要であるとのこと。

「この天分を発見するには、豊富な体験を持たなければならない。だから広く学び、人のよい型を見る必要がある。そうしていくうちに、自己の天分を発見することができるし、天分を伸ばす方法がわかり、さらに続いてひたすらに精進するときには、それが正しい行じかたであれば、いつかは理外の理、技術や理論や思索のおくにひそむ『何か』にふれることができるのである。」(1960沖正弘『ヨガ行法と哲学』霞ヶ関書房79頁)(続く)