ペンで字を書く練習は、慣れないうちは手の筋肉だけで行うから大変ぎこちないです。しかし、だんだん慣れてくるとサラサラ書けるようになります。
「例えば、一本のペンを持って字を書く練習をする時、最初は手の筋肉の拮抗だけで行っているが、長期間の練習のうちに、全身で字を書くようになるのである。このように何ごとにかかわらず、続けて行うときには、全身で見、感じ、行うようになる。こうしようと意識しなくともそうするようになって行く。だから、正しい上達を期するためには、正しい身構えで練習しなければならないのである。」(1960沖正弘『ヨガ行法と哲学』霞ヶ関書房74頁)
「手の筋肉の拮抗(きっこう)」とは、ペンを持つための筋肉が張り合っている様子です。ペンを過度に意識し、落とすまいとして、筋肉や関節に余分な力が入っているため下手な字になります。また、すぐに疲れてしまいます。
やがて練習を重ねますと、次第に上手くなって疲れ難くなります。それは、手だけで書くのではなく「全身で字を書くようになる」からです。そうなれば、手はただペンを持つだけとなり、肘にも肩にも余分な力が入らなくなります。
兎に角、継続して練習することが大事です。どんな事であれ続けていけば、目だけで見たり、表面的な意識だけで感じたり、手や肩だけで行ったりすることなく、「全身で見、感じ、行うようになる」のです。そうして、いちいち「こうしようと意識しなくともそうするようになって行く」と。
このように、部分に力が入らなくなり、全身で動作出来るようになり、意識しなくても自然に動けるようになっていくことを上達というわけです。
そのような域に達するには「正しい身構えで練習しなければならない」のですが、やはり、優れた師や先輩からしっかり学ぶことが必要になります。(続く)