この宇宙は、どのように生成し発展してきたのでしょうか。宇宙活動の根源があるとすれば、それは一体何でしょうか。
『古事記』冒頭には、アマノミナカヌシの神という宇宙の中心を司る働きがあり、それが陽の働きと陰の働きとなって活動力(ムスヒ)を生み、見事に発展していって大宇宙が成立したと記されています。
この日本神話の記述によれば、宇宙を生成発展させる力は、宇宙の中にあるということになります。宇宙の外から力が加わって宇宙がはじまったのではなく、宇宙自体に宇宙を成立・成長させる働きや作用が具わっていたと。
沖導師によるヨガの教えは、それと共通しています。
「また宇宙自身が自己を材料として自存しているのであり、宇宙の働きがそうであり、創造者がそのまま被創造物として現われているのである。だが、自己を離れて、またこの宇宙を離れて他に何か神と称するものがあるように誤って考えることが少なくないようである。これが迷信である。」(1960沖正弘『ヨガ行法と哲学』霞ヶ関書房60頁)
「宇宙自身が自己を材料として自存している」というのは、宇宙に必要な物は、最初から宇宙に具わっているという意味です。目に見えない「宇宙の働き」はもとより、宇宙を構成する上で必要となる一切の質量に至るまで、はじめから具わっていたという説明です。
そうして、宇宙の創造者は、そのまま宇宙の被創造者となっているというのです。宇宙を生成させる力と、生成される宇宙という存在は、不二ではなく(二つではなく)同一であるということになります。
宇宙の創造者は宇宙を創るだけ、創られる側の被創造者はただ創られるだけ、というのではなく、そもそも両者は融合一体なのです。(続く)