其の三十七 必要な物は取り入れ、不要な物は捨てていく…

何かを恐れる心を、自分が作り出している場合があると述べました。不安が高まってきて恐怖心が生じ、疑心暗鬼となって対立が深まるのは、国家同士の関係にも起こり得ます。

これまで外向的な約束を互いに何度も裏切ってきたというような場合、相手国に対する不信感は根深く、ちょっとした事で緊張の度が高まり易くなります。ここで叩いておかないと一気にやられかねないという恐怖心が、先制攻撃を誘発させる下地となるのです。

沖導師の教えの続きです。「生命は自存の働きであり、自分が必要な物を自分を材料にして作り出し、不必要なものはこわして自存しているのである。」(1960沖正弘『ヨガ行法と哲学』霞ヶ関書房60頁)

生命には、個体の維持という働きがあります。個体の維持とは、生命の維持に他なりません。そのために新陳代謝を行います。新陳代謝は、必要な物を摂取し、不要な物を排泄する働きです。

たとえばスポーツの練習や武道の稽古をすれば筋肉や骨格が鍛えられ、その後に摂取した栄養物を自分が必要とする材料として、より強靱な身体を作り出すことになります。そして、贅肉(ぜいにく)などの不要物はこわして自存(自分を存在させること)することになるわけです。

会社や活動も同様です。それらを自存させるためには、必要な物は取り入れ、不要な物は捨てていく新陳代謝の作業が求められます。その際に基準となるのが、経営理念や長期ビジョンです。

何のため誰のための経営なのか、会社や活動はこれから何をし、どこへ向かうのか。それらを明確にするほど、新陳代謝がしっかりしてきます。(続く)