其の三十四 成長するかどうかは、今出来る事をしているかどうかで分かる

綜學という全体学を研究し、著作と講義に務めることが筆者の天職です。いわゆるデスクワークの中で最も時間を割きたいのが綜學の基礎研究ですが、毎日庶務に追われ、なかなかじっくり基本を学べる時間が取れないのが日常です。

少しでも長く研究時間を取るためには、普段から実務をテキパキこなしていかなければなりません。

実務には、新しい講座や講義の準備といった時間を要するものや、随筆や連載の書き下ろし、論文やレポートの執筆、著作の校正など腰を据えて取り組むものから、役員を務めている会への助言、講座運営上の確認・返事など気を抜けない事、それから出張の準備・片付け、自分で手配する交通宿泊の予約といった小さな事柄まで、本当にいろいろあります。

それらは放っておくと、庶務としてどんどん溜まります。やらねばならない事が後ろから追い掛けて来ては、次々と積み重なっていくのです。それが重層化すれば、抜けや漏れ、ミスの原因ともなるでしょう。

そこで心得として、その日の内にやるべき事を可能な限り後回しにせず、どうせやる事なら早めに手を打つといった、先手処理・先手準備の習慣が大切になります。

兼好法師は、何かを学ぶときに「夕方には明朝があると思い、朝には夕方があると思って、後でもう一度丁寧に学び直せばいいなどと期待」して先送りするから、勉強が滞ってしまうのだと指摘しました。

多くの人が「一瞬間のうちにおいて、緩みの心が生じている」。でも、それに気付かない。だからこそ、「唯今の一念(今この時の集中力)」で「直ちに実行する」行動力の高さを持ちなさいと、兼好法師は力説したのです。

その人が成長するかどうかは、今出来る事をしているかどうかを観察すれば大抵分かります。いくらご大層なことを口にしていても、今やるべき小さな事を疎かにしているようでは決して伸びないと。

今、為すべき事が多くて困っているならば、優先順位を付けることで仕事に流れを付けてみてはどうでしょうか。まず何から手を付け、次にどれに進むかと。また、自分でなければ出来ない事のみを残し、他は人に任せるか、もう意味が無いと感じている事ならば思い切って止めてしまうのも方法です。

とにかく、「これぞ天命なり」と自覚出来る事を軸に、そこら生じる「外せない実務」を着実にこなしていけるよう顔晴っていきましょう!(続く)