組織や活動体が弱まってきたときに、所属する者たちに起こりがちな六つの状況の続きです。
その第四は「崩」で、内部分裂によって壊れてしまう様子です。これは、将軍と副将が仲違いし、怒った副将が将軍の指示に従わなくなり、その亀裂を突いて敵が攻めて来たときに起こります。
窮地に陥った副将は、いよいよ将軍を怨み、もう自己判断で戦うしかありません。一方将軍は、そういう副将を益々無能と判断し見捨てます。憐れなのは部下たちで、どちらに付いて行ったらいいのか皆目分からなくなり、とうとう全面崩壊に至るわけです。
その五は「乱」で、組織に統制力が無くなって混沌としていく様子です。これは、「将軍が弱くて厳格さを欠き、教育指導が明らかで」ないときに起こります。
将軍に威厳が無く、部下に対する指導・教化が不明瞭なのですから、幹部や兵士らは何を基準に動いたらいいのか分からず平常心を保てません。そうして「戦闘配置に統制が無くなれば、軍隊は混沌として」混乱状態に陥るばかりです。
その六は「北」で、兵士らが逃げ散ってしまう様子です。これは、「将軍が敵の情勢を料(はか)ることが出来」ないため、場当たりな戦闘になってしまうことによって起こります。
そうして「少ない勢力で多勢と合戦し、弱い勢力で強勢を攻撃」するという事態が続けば、負けが見えてきて、たちまち兵士らは自軍を見限って逃げ去ります。しかも「精鋭部隊が先鋒に」いないとなれば、軍隊に前に向かう勢いが生まれるはずがありません。
「これら六つの状況が、敗戦の道理」です。トップ(将軍)の「重大責任として、よくよく察しなければ」いけません。では、六つの敗戦のパターンを、まとめておきましょう。
「走」…双方の勢力が等しくても、味方が分散していると部下は走って逃げる。
「弛」…部下が強くても、幹部が弱いと組織はだらける。
「陥」…幹部が強くても、部下が弱いと組織は落ち込む。
「崩」…トップ(将軍)とナンバー2が不仲であると、組織は全面崩壊に至る。
「乱」…トップに威厳が無く教育力に欠けると、組織は混乱状態に陥る。
「北」…トップに情勢判断能力が無いと、負けが見えてきて部下は逃げ去る。
(続く)