その126 天の災いなどではなく、指導者の過ちである!

組織や活動体が弱まると、走る・弛む・陥る・崩れる・乱れる・北(に)げるという六つの状況が起こります。孫子は、これらは決して天の災いなどではなく、指導者の過ちであると断言しました。

それぞれの状況毎に、そうなる原因があります。将たる者は、普段からしっかり自己観照し、敗北に至らぬよう心しなければなりません。

《孫子・地形篇その二》
「軍隊には、走(そう)・弛(し)・陥(かん)・崩(ほう)・乱(らん)・北(ほく)という状態が起こる。これら六つの状況は、天の災いではなく、将軍の過ちである。

敵味方の勢力が等しいとき、(分散した)一でもって十を撃つことになれば、軍隊は散り散りになって「走」となる。

兵士が強くて(その上役の)幹部が弱ければ、軍隊はだらけて「弛」となる。反対に幹部が強くて兵士が弱ければ、軍隊は落ち込んで「陥」となる。

軍の副将が怒って(将軍に)服せず、敵に遭遇すれば怨んで自ら戦い、将軍は副将の能力を認めないという場合、軍隊は壊れて「崩」となる。

将軍が弱くて厳格さを欠き、教育指導が明らかでなく、幹部や兵士が常態を保てず、戦闘配置に統制が無くなれば、軍隊は混沌として「乱」となる。

将軍が敵の情勢を料(はか)ることが出来ず、少ない勢力で多勢と合戦し、弱い勢力で強勢を攻撃し、精鋭部隊が先鋒にいなければ、軍隊は逃げてしまって「北」となる。

これら六つの状況が、敗戦の道理である。将軍の重大責任として、よくよく察しなければいけない。」

※原文のキーワード
等しい…「均」、兵士…「卒」、幹部…「吏」、軍の副将…「大吏」、怨む…「?(つい)」、認めない…「不知」、厳格さを欠く…「不厳」、教育指導…「教道」、常態を保てず…「無常」、戦闘配置に統制が無い…「陳兵縦横」、敵の情勢を料る…「料敵」、多勢と合戦…「合衆」、精鋭部隊が先鋒にいない…「兵無選鋒」、敗戦の道理…「敗之道」、重大責任…「至任」(続く)