その4 要領が悪いから一番になれた…

鍼灸専門学校の昼間部の生徒数は、1クラスのみの約40名でした(夜間は確か2クラスだったからその倍)。そのうち、高卒現役で入った者は筆者を入れて11名(男子6名、女子5名)。大学を出てから入学した者は25名くらい(約6割)。あとは、高卒後に社会人となってから入学した人たちです。

ご年配の方も数名おり、年齢は18歳から50歳くらいまで老若男女が揃っていました。薬学部など医療系の大学を卒業している生徒が複数名いたものの、多種多彩な分野を経て入学してきた人たちが多く、話題は常に豊富で賑やかでした。

とにかく、勉強熱心な生徒ばかりです。しっかりやらないと父との約束は果たせないと思い、授業を休まないよう心掛けました。1回だけ寝坊して遅刻したものの、欠席は一日も無かったはずです。

一日が終わって下宿に帰ったら、必ず授業ノートを清書してまとめるようにしました。科目は、座学が解剖学、生理学、病理学、症候概論、治療一般、衛生学、医事法規、医学史、漢方概論、鍼灸理論、経穴学、マッサージ学など。
実技は、鍼(はり)と灸(きゅう)、それから手技療法である按摩(あんま)、マッサージ、指圧です。

試験は学期末ごとに年3回あり、科目別に実施されます。試験勉強のコツなんてありません。毎回ひたすら、教科書とノートを一心に熟読して試験に臨みました(実技はぶっつけ本番)。そうして、何とか最初の試験で一番(クラス中)となりました。

同級生の中には、「次は俺が一番になるからね!」と挑発してくる意気盛んな者もいました。彼は、群馬県の進学校として有名なK高校から入ってきた者です。
試験の上位者は、そのK高校出身者のほか、薬学系の大学を出ている薬剤師、東京六大学のT大学やW大学、法科で有名なT大学、T女子大学などの出身者でした。

一回目の試験が終わり、夏休みになって浜松に帰省し、早速試験の結果を父に報告しました。父は「そうか、次も一番を取れ!」と言うのみです。

そうして3年間、学科・実技とも(どちらも綜合点で)一番を通すことが出来ました。私が試験で一番になれたことには理由があります。それは「要領が悪かった」ことです。他の生徒は、必要な単位を取ることを第一に考えて試験に取り組んでいます。要するに不合格でなければいいと。

特に大学を卒業している人たちは、単位を取るための要領(要点を掴む知恵)を心得ています。ところが私は、浜松から上京したばかりの、山手線の切符の買い方すら分かっていない田舎者です。学校・武道場・鍼灸インターンのバイト先と下宿を往復する以外、何も知りません。

だから、意識を愚直に勉強に向かわせられました。その差が首席を導いたのであって、学校の一番と治療技術が優れているかどうかは全く違いました。(続く)