組織や活動体が弱まると、そこに所属する者たちに六つの状況が起こります。
その第一は「走」で、走って逃げ散る様子です。これは、全体としては「敵味方の勢力が等しい」のに、敵の分断策によって分散させられてしまったときなどに起こります。個々の戦闘場面で「一でもって十を撃つ」しかない事態に陥るのです。こちらは1割の勢力に過ぎないのですから、「軍隊は散り散りになって」勝手に走るばかりとなります。
現代の経営でも、一体何を目的とし、何を社会に提供する会社なのか不明になり、各部門がバラバラに仕事をするようなことにでもなれば、勢力は分散する一方となります。そうして、バラバラになった小集団が、一体となっている敵の大集団と競り合うことになるのですから、はじめから負けは見えております。
第二は「弛」で、弛んでしまう様子です。これは、部下たちは強くてしっかりしているのに、幹部が弱くてだらしないというときに起こります。「兵士が強くて(その上役の)幹部が弱ければ、軍隊はだらけて「弛」となる」と。
第三は「陥」で、落ち込んでしまう様子です。これは「弛」と逆の状況で、幹部が強くて部下たちが弱いときに起こります。「幹部が強くて兵士が弱ければ、軍隊は落ち込んで「陥」となる」と。
即ち、いくら部下がよく訓練されていても、それをまとめる幹部がしっかりしていないと、部下たちは幹部をバカにするようになって、結局組織は弛んでいきます。反対に、いくら幹部が優秀でも、部下がちゃんと育っていないと、結局幹部が細々した事まで何でもやらなければいけなくなって、組織全体に機動力が生まれないまま陥落してしまいます。
上官と兵士、幹部と部下の、両方のレベルが揃っていないとダメというわけです。(続き)