行軍篇その三に入ります。この項目では、自然の地形の中に危険な箇所がいろいろと存在していることを述べ、自軍はそこから遠ざかり、敵はそこに追い込まれるよう仕向けよと教えています。
現代においても、土地や場所、建物や環境などを、しっかりチェックしなければならないことは言うまでもありません。この項目は、このまま読めば分かるでしょうから解説は省きます。身を置く際の注意点として置き換えてみてください。
《孫子・行軍篇その二》
「次のような自然に出来た地形があれば、速やかに去るべきで、決して近付いてはならない。
絶壁の真ん中が谷川になっている所。
四方が切り立ち、中が窪んで穴になっている所。
三面が囲まれていて、入ると出られなくなる所。
草木が網のように密生していて、動くことが困難なところ。
低く落ち込んでいて、落とし穴になっている所。
洞穴(ほらあな)のように狭く、長い隙間(すきま)となっている所。
こちらはこれらから遠ざかり、敵には近付かせよ。あるいは、こちらはその方向に向かい、敵にはそれらが背後となるよう仕向けよ。
行軍中に、険阻(けんそ)な地形、溜め池や穴、葦原、山林、草木の茂った所があるときには、必ず慎重に探索せよ。これらに伏兵が潜んでいるからである。」
※原文のキーワード
自然に出来た地形…「天」、速やかに去るべき…「必亟去」、決して近付いてはならない…「勿近」、絶壁の真ん中が谷川になっている所…「絶澗」、四方が切り立ち、中が窪んで穴になっている所…「天井」、三面が囲まれていて、入ると出られなくなる所…「天牢」、草木が網のように密生していて、動くことが困難なところ…「天羅」、低く落ち込んでいて、落とし穴になっている所…「天陥」、洞穴(ほらあな)のように狭く、長い隙間(すきま)となっている所…「天隙」、こちらはこれらから遠ざかり…「吾遠之」、敵には近付かせよ…「敵近之」、こちらはその方向に向かい…「吾迎之」、敵にはそれらが背後となるよう仕向けよ…「敵背之」、溜め池や穴…「?井」、葦原…「葭葦」、草木の茂った所…「?薈」、必ず慎重に探索せよ…「必謹覆索」、これらに伏兵が潜んでいるからである…「此伏姦之所処也」(続く)