中国・宋の時代の話です。その頃の中国は、外国からの圧力が高まり、その対策費がふくれあがっていました。また、国内では、役人に支払う給料などの費用がかさんでいました。
財政危機のままではいけないというので、王安石という人物が抜擢されて革新政策を行うことになります。安石は皇帝(神宗)に用いられ、宰相(さいしょう)に登用されたのです。
改革の目的は、税源の確保や人民の生活の安定にあります。そのために、小商人や貧農を守るための諸改革(支援策)を断行し、合わせて不正を除くことにしました。
安石の改革は、時代に要請に適っており、財政は一時黒字に転じます。
しかし、それは大商人や大地主たちの既得権益を抑えることに他なりませんから、彼らは改革に反対しました。また、権力を手放したくない元老や重臣らも猛反対します。
やがて、後ろ盾であった神宗皇帝が死去したこともあって、改革は失敗に終わります。
ただし、失敗の根本原因は、王安石の頑固な性格と、部下たちの生真面目さにありました。王安石は頭脳優秀で実行力も抜群なのですが、それを鼻にかけて俺が一番偉いという態度を取り続けました。
行動が誰よりも早い彼にとって、(仕方のないことですが)やっと付いて来る仲間たちがノロマにしか見えず、周囲の者の忠告を聞こうとしませんでした。
それから、部下たちは熱心に仕事したのですが、改革の成績を上げることばかり考えてしまい、結果的に人民を圧迫することになりました。
おそらく今まで活躍の場を与えられなかった不遇な者たちが、選ばれて改革を担当する官吏に就いたのでしょう。溜まっていた不満が原動力となっている分、人民に対する態度が横柄(マウンティング)になってしまったものと推測します。民衆の支持を失ったのは当然でした。
これから日本の根本改革が行われます。急いで変えなければならない問題は一日も早く手を打つべきですが、(いろいろな関係者の心情を無視したまま)あまりに急ぎ過ぎると王安石のように失敗してしまいます。
強い実行力とともに、人の成長を待つ根氣、やっと付いて来ている部下への労い、(面倒なことですが)これまで顔晴ってきた先輩や同輩たちへの思い遣りなどを心掛けてもらえば、現代の王安石は必ず大改革の成功者となるはずです!
日本と世界が、それを待っています。