改革は急ぎ過ぎると失敗する…

こんばんは。先月末に発熱があり、リアルご参加の皆さんにうつすわけにはいかないので、オンライン講義が続きました。昔は「風邪は誰かにうつせば治る」なんて言いましたが、今は冗談にも言えませんね。

◆日記(1日~5日)
・1日(木)東京・経世志塾でオンライン講義~明治天皇ご愛読の『宋名臣言行録』
・4日(土)日南・小村寿太郎没後110周年式典でオンライン講義~その人物と器量
・5日(日)京都綜學院・第3期5月例会オンライン講義~『徒然草』後編&ワーク指導

【講座・勉強会のご案内】
★政経倶楽部連合会・名古屋支部例会
日時:令和4年6月16日(木)午後6時半から
演題:ウクライナ侵攻から始まる、世界の激変と日本の針路
会場:ウインクあいち(名古屋駅桜通口から徒歩5分)
会費:会員2000円 ビジター3000円

☆第6期・関西林英臣勉強会(令和4年度)
年間テーマ:『社員心得帖』に学ぶ日本人の仕事ぶり
第2回 6月18日(第3土)
タイトル:一歩一歩成長する
【中堅社員の心得】前半から
・仕事に興味を持とう。でないと意欲は湧かず、心身共にすぐ疲れる
・最初に出来そうもないと考えると、出来るものも出来なくなる
・信用は、小さな連絡や報告など、身辺の小さいところから築かれる
・日頃の訓練や躾(しつけ、身を美しく)が、大きくものをいう
・「大将に叱られたら一人前や」~叱られて喜べるかどうか  他
参加費:年間お申込の方1万2千円(大学生8000円、高校生以下無料)
    各講座3500円(大学生2000円、高校生以下無料)
お申込は下記からどうぞ↓
docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSfx-ffFOhvuoVqEuBPI3Fm13NsyjMEbJs6aZxDrTWZauubyCg/viewform?fbclid=IwAR2MTmInPV8vTr2RoYEg8R7lTRzY2_73abdZnnS1bhyyhS-HALwwnFeuX30
お問合わせ:浜野夕希子さん info@hamanoyukiko.com

●評論・随筆●

◆改革は急ぎ過ぎると失敗する…◆

シナ史に、唐の後に存在した宋という王朝がある。この時代、シナは遼や西夏など北方の強国による侵入に苦しめられ、これを懐柔するための金品(歳幣)と、官僚組織を維持するための支出に悩まされた。当然のこと、民衆の生活が圧迫されることになる。

神宗皇帝は、この財政危機を打開しようとして、王安石という改革政治家を宰相に就けた。改革の基本は、大商人や大地主の利権を抑えることで中小商工業者や一般農民らを救い、合わせて財政を黒字に転じさせようというところにあった。

そのための諸改革は、上手く進んだかに見えたが、結局失敗する。その直接の原因は、既得権益を握っている保守派官僚や富豪たちの猛反発を受けたことにある。しかし原因は、それだけではなかった。挫折の理由は、「急いては事を仕損ずる」という諺の通り、改革を急ぎ過ぎたことにある。

王安石は、既に偉くなっている守旧派を全然頼りにならないと考えた。ならば、新たに改革派の官僚を育成せざるを得ない。そこで王安石は、官僚政治家採用試験である「科挙」の改革を行った。科挙は筆記が基本だから、受験生たちは一心不乱に暗記に努める。合格者は暗記が巧みな学生たちだが、人間的にも立派であるとは限らず、むしろ逆も多いと。

王安石は、官僚たちが名利に囚われ、私腹を肥やしてばかりいるのは、勉強そのものが間違っているからだと考えたに違いない。暗記中心ではダメで、改革を担う人材として優秀でなければいけないと。そうして、試験内容に王安石自身による章句(儒学古典である経書の注釈文)を加えてみた。

ところが受験生らは、その意味するところ(指導者の心得)を理解しようとせず、ただ章句の文を暗記しては、そらんずるばかりであった。結局、優秀な官僚に育ちそうな者たちまで、暗記中心の学生に変えてしまったようであると、王安石は晩年その失敗を覚った。要するに、偉くなりたいだけの出たがり屋を育ててしまい、選ばれた官吏たちは改革の成果を上げることにのみ熱心となり、民衆の暮らしは二の次となってしまったのだ。やはり人物の登用には、筆記試験以外に性行の確認が必要だ(特に弱者や目下への態度と慈愛)。

さて昭和歴代首相指南役であった安岡正篤先生によれば、動乱を喜ぶ四タイプに注意せよとのこと。第一は、人生がつまらないので、どさくさにまぎれて暴れてやろうというタイプ。第二は、その暴れ方が激しく、動乱につけ込んで盗んだり掠めたりしてやろうというタイプ。第三は、教祖的なアジテーターの元に馳せ集まっては徒党を組むタイプ。第四は、クーデターでも起こして世の中をもっと乱してやろうというタイプだ。そういう内容が、明代の学者呂坤著の『呻吟語』の中にあり、それが『古典を読む』明徳出版社に出ている。

今この時代も、急ぎ過ぎる改革者に注意が要る。悪者を決めて集中砲火を浴びせる扇動的な表現に、二者択一的で単純な思考しか出来ない輩が次々乗せられていく。だがこの世は、正義の中に悪があり、悪の中にも正義があって、一本気な改革者が思うほど単純ではない。

改革は、それが根本的であるほど簡単には進まぬ。急いではいけないのだ。が、勿論直ぐに対処しなければならないことも多い。即ち緊急に処置するべき事、急ぎつつも慎重に進めていくべき事、根本改革としてじっくりやり抜くべき事を、短期・中期・長期に分け、それらがよく繋がるよう軸を通すのだ。胆力・知恵・根氣等、改革指導者には全部欲しい。(総研レポート61号 6月1日)

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