物理学に「運動エネルギー」という言葉があります。運動している物体が何かに当たったときに、相手を動かしたり変形させたりするエネルギーのことです。
運動エネルギーは、物体の質量(重さ)が増えるほど大きくなり、運動の速度が速くなるほど大きくなります。その際、運動エネルギーは物体の質量に比例し、速度の二乗に比例します。重さが倍になればエネルギーも2倍になるのに対し、速さが倍になればエネルギーは4倍になるというのですから、とりわけ速度が重要になることが分かります。
物理学に「運動エネルギー」という言葉があります。運動している物体が何かに当たったときに、相手を動かしたり変形させたりするエネルギーのことです。
運動エネルギーは、物体の質量(重さ)が増えるほど大きくなり、運動の速度が速くなるほど大きくなります。その際、運動エネルギーは物体の質量に比例し、速度の二乗に比例します。重さが倍になればエネルギーも2倍になるのに対し、速さが倍になればエネルギーは4倍になるというのですから、とりわけ速度が重要になることが分かります。
原理原則に基づいた正法で基盤を整え、現場では奇法を存分に使って臨機即応に動くという在り方は、経営や仕事にも置き換えられます。
まず定石通りの基本(正法)を身に付け、それから現場の対応力(奇法)を養うという順序は、物作り、設計、料理、治療、カウンセリングなど、殆どの分野で踏んでいることです。武道も、基本をしっかり稽古し、定石通りの攻撃法が身に付いてから応用技に進みます。
孫子は「およそ戦闘というものは、正法で合戦し、奇法で勝つことになる」と述べました。先に解説した通り、正法は正規軍による定石通りの攻撃法、奇法は敵の虚である搦め手や側面を攻める方法のことです。
定石に則る正法は戦い方の基本なのですが、ともすれば教科書通りの運用となりがちです。現実においては、戦い毎に状況が異なります。似ている戦闘はあっても、全く同じ戦いというものはありません。
孫子によれば、攻撃には「奇正」の別があります。「正」は「正法(正攻法)」を意味し、正規軍による定石通りの攻撃法です。正面突破を可能とさせる、正規の作戦が正攻法となります。
これとは別に、敵の虚(弱点)である搦め手(からめて、裏門・裏側)や側面を攻める方法があり、それを「奇法(奇攻法)」と言います。状況の変化を読みながら、虚に対して奇襲攻撃を仕掛けるやり方で、特殊編成の遊撃隊が担当します。不正規兵力によるゲリラ戦も奇法に含まれます。
軍隊の指揮系統を有効に機能させる上で用いられる旗や幟、鐘や太鼓。これらを現代に置き換えると、一体何になるでしょうか。月並みではありますが、以下の事柄を挙げておきます。
目に訴えるということでは、お揃いの制服やネクタイ、バッジなどです。それらは同じ目的を持ち、使命を担っている仲間の一員という自覚と、任務を果たすための責任感を呼び起こします。
「指揮系統」は、原文では「形名」です。形名の「形」は目に見えるもので、具体的には旗や幟(のぼり)のことです。「名」は言い表すこと、即ち音に出す号令のことで、耳に聞こえる鐘(かね)や太鼓の音がそれです。目に訴えることで高揚感を起こし、耳に響かせることで士気を高め、全員の動きを整えてまいります。
指揮系統は、紙に書いた組織一覧表のことではありません。組織編成が出来上がっただけではダメで、実際に動く仕組みとならねば指揮系統とは言えないのです。
人が集まる団体にもいろいろありますが、目的に向かって行動を起こすときは、組織として一丸とならねばなりません。
ただ人が群れているだけの集まりはサロンと言います。昔、文学者が三々五々(さんさんごご、あちらに三人、こちらに五人というふうに散り散りに出入りする様子)やって来る喫茶店があって、その群れを文学サロンと呼んでいました。文学仲間と交流することで、刺激を受けたりヒントを貰ったりしていたのです。
いくら勇猛な兵士が揃っていても、バラバラに戦っていたのではダメです。軍全体として統括された戦いが出来るようでないと、個々の戦闘では勝っていたのに大局的には敗戦という結果になります。
また、兵士が大勢(おおぜい)揃っただけでもダメです。部隊編成と指揮系統が確立していないと、ちぐはぐな戦いとなって、やはり大局的には負けていきます。
続いて孫子は「地は度を生じ、度は量を生じ、量は数を生じ、数は称を生じ、称は勝を生ずる」と述べました。
「地」は、国土の広さや戦地への距離です。それを計測(度)すれば、確保出来る資源・食糧や投入すべき物資の「量」が読め、そこから養える人口と動員可能な兵士の「数」が分かります。その上で戦力の優位性(称)が定まってくれば、勝利(勝)が見えてくるという次第です。
前線で奮戦し、戦闘で勝ったとしても、本国の政治が悪ければ折角の勝利も水の泡と化します。華々しく戦う将軍の人望が高まり、国民から英雄視された場合、本国の大臣たちが嫉妬して、必要な武器や物資・食糧の輸送を止めてしまうといったことも起こり得ます。味方に足を引っ張られ、酷ければ殺されてしまうことすらあるのですから、将軍は本当に大変です。