一つ一つの所作がそのまま健康法となり、悟りへの道にもなる。そうなるためには呼吸が大切です。
「呼吸のコントロール法を把握すれば、道は近きにありで、今行っていることのやり方を工夫するという中に道があることに気付くであろう。ヨガの目的はここにあるのである。つまり日常生活をそのまま健康道にし、自己の業を行うことを解脱道たらしめるところにある。」(1960沖正弘『ヨガ行法と哲学』霞ヶ関書房83頁)
呼吸のコントロール法は、決して分かり難いことではありません。呼吸は、吐く息に力を入れ、吸う息は自然のまま。それが沖導師の教えです。
普通は、意識して吸う息に力を入れ、十分吸い込んだら、吐く息は自然のままに行えばいいと思われがちです。呼吸は酸素を取り入れるのが目的だから、吐く息より吸う息のほうが大事に違いないと。
ところが、意識すべきは吐く息のほうであり、しっかり吐けば吸うほうは自然でいいというのです。
吐く息を意識せよという教えは、筆者が稽古している空手道(松濤會)の心得に共通しています。空手道の形には、受けて→突く、蹴って→受ける、受けて→受けて→突く、受けて→突く→突くなど、いろいろな「一連の動き」があります。
これらの動きの際、動き(息)を切らず、節目になるところまで一息で動作します。従って、吐く息を意識して稽古し、吸う息は自然に吸えばいいということになります。
同様に、日常の所作や仕事においても、常に吐く息を意識し、流れるように一息で動作すれば、日常生活がそのまま健康道となり、仕事や活動がそのまま解脱道ともなるわけです。「道は近きにありで、今行っていることのやり方を工夫するという中に道がある」という教えは、まさにそういうことなのでしょう。(続く)