其の九十二 呼吸は心と体をつなぐ。ヨガとはつながること、だから呼吸はヨガの基本

力はあっても、心身に故障があって心身が統一されていないと、力は出せないとのことです。では、どうすれば心身が統一された状態で物事を為せるのでしょうか。それには、心理的、生理的、解剖学的な安定が必要になるのだそうです。

「力はあっても出せる状態になっていなければ出ないものである。心身が統一されている時初めて力を完全に出し得るものであって、心身のいずれかに少し故障があっても、力の完全な発揮は阻害される。この心身を統一して物事をなすために必要なことは、心理的安定、生理的安定、解剖学的安定を必要とするのであって、この方法を教えているのがヨガであり、ヨガ行法の基本をなすものが呼吸調整法である。」(1960沖正弘『ヨガ行法と哲学』霞ヶ関書房82頁)

心理的な安定は精神的な安定のことであり、生理的な安定は体の機能的な安定、解剖学的な安定は骨格や筋肉などの器質的な安定のことでしょう。精神的(こころ)・機能的(はたらき)・器質的(からだ)の三者が安定すれば、自ずと心身は統一されてくるわけです。

「ヨガ」という言葉は「つながり」を表しています。密教ではこれを「瑜伽(ゆが)」といい、座禅や瞑想を実践することで心身を統一し、大宇宙の真理である大日如来とつながる(融合一体化する)境地を意味します。

そして、ヨガの基本が呼吸調整法です。心は、呼吸によって乱れたり落ち着いたりします。また、姿勢も重要です。

「心が乱れると息が乱れ、呼吸を整えると心が落ち着く。また姿勢が正しくないと不完全な呼吸しかできないが、姿勢を正しくすると直ちに正しい呼吸ができるのである。」(1960沖正弘『ヨガ行法と哲学』霞ヶ関書房82頁)

呼吸は心と体をつなぎます。心身の統一には、呼吸法の体得が不可欠となります。そこから、諸芸のコツがわかってくるのです。

「また生理的に異常があると呼吸は病的になり、呼吸を正しくする努力を行えば、異常は正常化してくる。呼吸をコントロールできると、心と体の両方をコントロールすることができるのであって、このように心身統一に必要な呼吸法を把握することを諸芸のコツと言うのである。」(1960沖正弘『ヨガ行法と哲学』霞ヶ関書房82~83頁)(続く)