ここで沖導師は、呼吸の大切さについて、いくつかの「日常的な言葉」を用いて説明しています。
「呼吸が大事だ」、「呼吸がわかった」。これらは、呼吸の重要性が体験的に分かったときに発する言葉です。
「その手で」。これは、見ている人が「それそれ、そのやり方だよ」と感じたときに、相手に向かって放つ言葉だと思われます。
「その調子で」。これは、「間の取り方やテンポがいいね」という意味の言葉です。
「呼吸があわない」。これは、二人以上で何かの動作をするときに、緩急や強弱など互いのリズムが噛み合っていない状態を表した言葉でしょう。
「気合がはいっていない」。これは呼吸力そのものや、呼吸による集中力などが不足していることを指摘した言葉だろうと考えます。
これらは、どれも「呼吸との関係を現わしているものであって、この呼吸法をつかんだ人が名人である」とのことです。
そして、諸芸それぞれに「呼吸のリズム」があり、それは「頭で考え把握できるものでは」なく、ひたすら「繰り返して練習」することが肝腎で、修練を「つんでいる間におのずと会得されるもの」なのだそうです。
繰り返しの稽古や練習が大事なことは、「諸芸に道という語がついている」ことからも分かります。「武道、茶道、華道、書道等」の「道」は、どれを選ぼうが、たゆまず一筋の道を進むことの大切さを表しているのです。
そして、「それを行うことが健康と悟りへの道に通じている」というのは、どの道にあっても呼吸の体得が求められ、それによって健康と悟りへ向かえるということを教えているのでしょう。(続く)