では、この自分を動かしている無意識を、どのようにコントロールすればいいのでしょうか。沖正弘導師の教えの続きをご紹介します。
「ここで課題となることは、この無意識をどのようにして支配すればよいかということである。
意識は頭で考えることであり、無意識は体全体についた知慧であるから、無意識は体を通じて支配する以外にはない。体を通じてしか無意識を改造することはできないということを意味する。だからして、考えてもわからないし、読んだり、聞いたりしてもつかめないというのである。」(1960沖正弘『ヨガ行法と哲学』霞ヶ関書房68頁)
頭では分かっているのに、体が付いていかない。今こそ起つときだ!と承知しているものの、なかなか動けない。知識として理解したが、やってみるとさっぱりダメ。そういうことが、意識レベルで止まっていることの例でしょう。
ちゃんと動ける。動いて上手くやれる。そのためには、やはり無意識の領域に到達した「体得」が無ければなりません。それが「体全体についた知慧」で、それによって無意識が支配されていくのです。
とにかく試してみる、やってみる。そうやって「無意識を改造」していけば、やがて頭で考えなくても的確に動いている自分がいることになります。相撲で「思わず技が出て勝てた」とか、野球で「難しい球だったが、体が勝手に動いて打てた」などというのが、修練を積んだことによる無意識の動きです。あらゆるプロが、無意識の領域に至るまで鍛練を積むことによって、それぞれの役割や仕事をこなしているわけです。
繰り返しの鍛錬が必要な理由は、「考えてもわからないし、読んだり、聞いたりしてもつかめない」からです。筆者は武道の稽古を今も続けていますが、道場で自分にとって新しい技や動きを教えられたとき、最初は頭で考えてしまって動作がちぐはぐになります。でも、一人でやる自主稽古を積んでいきますと、次第に体得されて動けるようになるということを体験しています。(続く)