東洋思想の陰陽論には、陰中に陽が有り、陽中に陰が有るという考え方があります。陰を季節の冬とすれば、寒い冬(陰)にも日中の陽だまりには温かさ(陽)があります。これが陰中陽有りです。
逆に、夏は陽の季節ですが、(暑い朝は別にして)明け方は涼しい(陰)から寝冷えに注意が要ります。これが陽中陰有りです。
そもそも陰陽論は、物事を陰と陽の二つに分類するための考え方ではありません。物の性質や働きを二つに分けつつ流れ(循環)を読み、陰陽のバランスを取り、全体の調和を図っていくところに陰陽論の目的があるのです。陰陽、循環、調和、これらを元に考察してこそ、物事の真実が掴めるというわけです。
沖導師の教えの続きです。ヨギ(ヨガの行者)の「心は常にバランスを保っているので静中に動機を失わず、動中に静境を保もち、すべてを神意と受取っているからどんな立場におかれても、それは善くなる前提であると感謝して受入れて心静かに全力をあげて精進することができる。だからすべての縁は好転してくるのであって、同一境遇にあっても心の持ち方一つで客観は変ってくるものである。」(1960沖正弘『ヨガ行法と哲学』霞ヶ関書房62頁)
「静中に動機を失わず」というのは、静かにしていても動機、すなわち「行動の元」を失わないということです。また、「動中に静境を保もち」というのは、活発に動いている最中にも静境、つまり「静かな心境」を保っているという様子です。
静かにしているときこそ、次へ向けての準備を整えるべきときであり、活発に動いているときこそ、自分(原点や目的)を見失ってはならないときというわけです。(続く)