其の三十九 日本は一根源多神教の国

宇宙以前に創造主がおり、創造主はその力を使って宇宙を創造されたという考え方があります。創造主は宇宙以前、言い換えれば宇宙の「外」にいるという見方であり、一般的に一神教がこの解釈をとります。唯一神である創造主が、この世の一切を外から創られたという見解です。

日本神話である『古事記』冒頭の宇宙論はどうかといいますと、この宇宙を生成発展させた根源神は、宇宙自身に内在していると考えています。大宇宙に存在する全てが一根源から起こっているという解釈であり、その根源がアマノミナカヌシの神(宇宙の中心を司る神 ※神はここでは働きや作用のこと)です。

前者は「創り主は一つ」、後者は「生成の根源は一つ」という考え方であり、両者は似ています。しかし、前者の創造主は宇宙の外におり、後者の根源神は宇宙の内に在ります。

沖導師は「自己を離れて、またこの宇宙を離れて他に何か神と称するものがあるように誤って考えること」は迷信であると言われました。自己を離れて神と称するものはないというのは「自己そのものが神である」という意味であり、宇宙を離れて神はないというのは「宇宙それ自体が神である」という意味でしょう。

沖導師は受講生に、「生命即神(せいめいそくしん)」を説きました。この命そのものが尊い神であり、まさに「神の働き」と言うべき自然治癒力は、元々命(自己)に内在しているという教えです。自然治癒力は自然良能ともいい、免疫力もその一つです。

綜医學(東洋・日本医学を元にした綜合医学)では、治療に際して安静を重視します。それは自己の内なる神性、すなわち自然治癒力をしっかりと働かせるためです。

一方、西洋医学の場合、放っておいたら悪くなると考えることが多いように思われます。そのままにしていたら治らないのだから、外からメスを入れて切るなど何らかの処置を施さねばならないと。

こうして、私たち一人一人の命がそのまま神であり、大宇宙も大きな命としてそのまま神であるという考え方がヨガ哲学にあります。生命はそれ自体が神(生命即神)であり、大宇宙もそのまま神(宇宙即神)なのです。それで、自己を離れて神は無く、宇宙を離れて神と称するものは無いという理解に至るのです。

なお、八百万の神々が存在する日本は、多神教の国であると考えられています。しかし、この宇宙の一切がアマノミナカヌシの神の現れだから、単なる多神教ではなく一根源多神教となります。日本は一根源多神教の国なのです。(続く)